「赤ちゃんの駅」モデルケースに 他自治体に波及する板橋区の取り組み

キッズデザイン新時代
乳幼児のお父さん向けプログラムで、子供と遊ぶ“イクメン”たち

 東京で一番住みやすい区を目指して-。この目標に向けた施策の一環としてキッズデザインにも熱心な取り組みを見せる東京都板橋区。乳幼児を連れた母親が気軽に寄れて、おむつ替えや授乳ができる公共スペース「赤ちゃんの駅」を整備し、2009年にキッズデザイン賞を受賞した。以来、4年連続でさまざまな施策が同賞を受賞しているほか、一連の取り組みは他の自治体にも波及するなど、モデルケースとしても注目されている。

 もとは職員の提案

 板橋区は、“東京で一番住みやすい区”の条件の一つとして「安心して子育てができるまちを目指してきた」(板橋区子ども政策課の椹木恭子課長)。

 「赤ちゃんの駅」は、そのための施策として考案されたものだ。もともとは職員の提案から生まれ、当時は先進的な取り組みとして評判だったという。

 乳児を連れて外出する際に、安心しておむつ替えや授乳をできる場所がない、という声は以前からよく聞かれた。そこで板橋区は、安心して気軽に利用できる場所として、区内の児童館や保育園に授乳スペースや粉ミルク用のお湯の提供などを行う環境を整備した。これが始まりだった。

 受賞のきっかけは、区の産業部門で区内のデザイン強化を進める中、子供の視点にも着目し、06年にキッズデザイン協議会に登録したこと。「赤ちゃんの駅」の取り組みが関係者の目にとまり、審査員の推薦を経て受賞に至ったという。

 「児童館や保育園、子育てひろばなど84カ所から始まり、現在では区内の高齢者施設や大型商業施設など171施設に広がった。この取り組みが評価され、10年にはグッドデザイン・ライフスケープデザイン賞も受賞した」(同)

 板橋区は09年に続き、10年には「離乳食訪問お助け隊」で、11年には児童館で展開した「赤ちゃん出会いのひろば」、12年には「森のサロン」と4年連続でキッズデザイン賞を受賞している。

 切れ目なく一貫支援

 さらに、「赤ちゃんの駅」は東京都の「赤ちゃん・ふらっと」など、他の自治体にも広がりをみせている。

 板橋区では、キッズデザイン賞を受賞した取り組みなどについて、現在も継続しているほか、新たな施策にも取り組み始めている。例えば、流通大手のイオンと連携して進めている「子育て出張相談」では、区内にあるイオンの店舗に職員が出向き、子育てに関する相談を受けている。区内の児童館は乳幼児親子向けの支援拠点となり、小学校で放課後の子供たちの居場所となる「あいキッズ」と機能分担を図った。

 「赤ちゃん出会いのひろば」は現在、「子育てひろば」として活動を拡充し、全26児童館で乳幼児親子向けの相談会やプログラムを毎日開催している。これにより、当初は18%だった0歳児の児童館登録の割合は、3倍以上にまで増えた。「今後はスマートフォン向けのアプリを通じた子育て関連情報の発信なども進め、施策を充実していく」(椹木課長)としている。

 さらに板橋区では「16年から妊婦面接を本格化し、児童館と連携した『いたばし版ネウボラ』を進めている」(板橋区生きがい部健康推進課の新部明課長)。今後は妊娠期から子育て期、そして若者まで、“切れ目なく”一貫して支援していくことが重要、との認識から「組織体制を含め、支援のしくみを強化していきたいと考えている」(同)という。

 先進的な施策を次々と打ち出している同区の動きは、多くの自治体にとって大きな刺激になりそうだ。(キッズデザイン取材班)