人材投資、一段の歳出拡大 「骨太方針」と「未来投資戦略」を閣議決定
政府は9日の臨時閣議で、経済財政運営の指針「骨太方針」と成長戦略「未来投資戦略」を決定した。人材投資を新たな看板とし、教育無償化や待機児童対策など一段の歳出拡大につながる施策を並べた。財源議論は年末に先送りした。達成困難となっている基礎的財政収支の黒字化目標は形骸化が著しく、2018年度に予定する中間検証をにらんだ見直し議論が今後進む見通しだ。
2日に示した方針案からは薬価引き下げの一部表現が自民党などの反対で削られ、歳出抑制の要となる社会保障改革の難しさが浮き彫りになった。小中学校の夏休みの一部を地域ごとに春や秋に分散させる「キッズウイーク」については「教育現場に混乱が生じないよう対応を検討する」との文言が追加された。
日本経済は消費低迷が続き、少子高齢化に伴う働き手不足が深刻な課題となっている。骨太方針は「人材投資による生産性向上」を打開策の柱に据え、幼児教育と保育の早期無償化を打ち出した。歳出削減や増税、企業と働く人から保険料を集める「こども保険」が財源候補に挙がるが、借金による痛みの先送り論も自民党内にくすぶる。大学進学の負担軽減策と合わせ、財源確保が年末に向けた論点となる。
財政運営では、20年度までに基礎的財政収支を黒字にする目標を維持した上で、同時に国内総生産(GDP)に対する債務残高比率を引き下げる目標を併記。歳出抑制より経済成長を重視する姿勢をにじませた。
成長戦略は人工知能(AI)など先端技術の活用が柱。小型無人機ドローンを使った荷物配送を山間部に続き都市部でも20年代に本格化させ、22年にはトラックの隊列自動走行を高速道路で商業化する。企業の活力を引き出すため、規制を一時凍結して迅速な実証試験を促す「サンドボックス制度」も導入する。
同時に閣議決定した規制改革実施計画には、行政手続きを簡素化して企業の作業時間を2割減らす目標を盛り込んだ。
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