(下)もはや国際金融機関ではない? 他人任せの融資、援助意識も低く

中国主導 AIIBの研究
16日、韓国・西帰浦で行われたAIIBの第2回年次総会開幕式(共同)

 ■他人任せ、援助意識も低く

 韓国の済州島で、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁は、「21世紀のガバナンス(組織運営)でAIIBは短期間に融資15件と投資1件の案件を承認している」と強調した。公式ホームページからAIIBの投融資案件一覧を作成してみたが、確かに、わずか1年半の間のプロジェクトしてはスピード感がある。世界銀行やアジア開発銀行(ADB)などの既存の国際金融機関は融資審査などに時間がかかるとして途上国から不満の声が上がっているが、AIIBは機動的な資金供給態勢を整えている点をアピールした格好だ。

 協調融資に相乗り

 だが、ここにも脆弱(ぜいじゃく)性がある。15件の融資案件のうち12件までが世銀やADBのほか、欧州復興開発銀行(EBRD)などとの協調融資で占められる点。途上国支援では国際機関や民間投資家、地元当局の資金なども含む協調融資は通常なので表面上は問題ないが、「AIIBは結局、自らの力で主導的に支援プロジェクトをまとめ上げる力はなく、ADBや世銀などが採算性や経済波及効果を審査したプロジェクトに相乗りしたにすぎない」(国際金融筋)との手厳しい評価が広がった。

 単独融資とみられるバングラデシュの電力供給網プロジェクトや、オマーンの港湾・鉄道整備プロジェクトにしても、どこまでAIIBが主導して審査したのかは疑念が残る。同時にタジキスタンなど旧ソ連の中央アジア、インドとパキスタンとバングラデシュ、インドネシアに偏在した投融資で、地域的な広がりもまだまだ。わずか100人の本部職員で、独自に審査して承認することは難しい。

 実はADB総裁で元財務官の中尾武彦氏はAIIB総裁の金立群氏と旧知の仲だ。横浜で5月に開かれたADB第50回年次総会の席で、中尾氏は膨大なインフラ需要に対応するため、「AIIBを含め民間や2国間、多国間のパートナーと協調融資を強化する」と、AIIBに助け舟を出す姿勢を強調した。

 ADBの試算では、2030年までの間にアジアで電力や交通、通信、水・衛生で総額26兆1660億ドルものインフラ建設のための資金需要があるという。既存の金融機関だけではまかないきれず、AIIBの成長にも期待するADBの考えが透けてみえる。そうはいっても途上国でのインフラ建設は、収益性の高い民間プロジェクトとは一線を画すものだ。発電所を建設しても、幅広い経済波及効果がなければ、その案件だけの収益では、投融資資金の回収は困難だからだ。

 “建設会社”へ群がり

 金氏はAIIBが、「ウィンウィンの国際金融機関になる」と話すが、途上国への経済支援が必ずしも収益を狙った行為ではないのは明らか。その原則をはき違えて、80カ国・地域が利益を求めてAIIBに群がっているとすれば、それは途上国支援のための国際金融機関ではなく、単に中国が旗を振る“建設会社”の株主になるがごとく。中国の意向に従ってプロジェクトに資金を出しても、本当に収益を上げられるか。

 もちろん中国は、国内総生産(GDP)で日本の3分の1ほどだった2000年ごろから、現在では日本の2倍を超える規模になるなど、既存の常識で測れない成長速度をもつ。「質より量」で、AIIBも強引に押し出す戦略とみられるが、国際社会から信頼を得るまで、まだしばらく時間がかかりそうだ。(上海 河崎真澄)

(上)「わざわざ中国で働きたくない」 解消されぬ人材不足、ADBとの差歴然