米、FTA視野にじわり圧力 「対日赤字是正」USTR代表が経産相に要求

 
USTRのライトハイザー代表と握手を交わす世耕経産相=6月29日、ワシントン(代表撮影・共同)

 世耕弘成経済産業相は6月29日、米ワシントンで通商代表部(USTR)のライトハイザー代表と会談後、記者会見で対日貿易赤字の是正を求められたことを明らかにした。日米の貿易不均衡を問題視するトランプ政権の姿勢が改めて浮き彫りになった形だ。米国は将来の日米自由貿易協定(FTA)交渉を念頭に米国産牛肉の関税などで露骨な圧力をかけ始めており、貿易摩擦の再燃が近づいている。

 世耕氏は会見で「米国の巨大な対日貿易赤字や2国間の貿易不均衡是正の重要性について言及があった」と指摘。ただ、「向こうがおっしゃって、私は聞いただけだ」と説明し、トランプ政権が意欲を示す日米FTA交渉については「議論していない」と話した。

 ライトハイザー氏は同21日、米議会の公聴会で「日本が牛肉などで一方的に譲歩すれば、貿易赤字は簡単に減らせる」と述べ、日本に市場開放を迫る構えを明確に打ち出した。

 「米国の赤字削減に努力していることを示せば、日米関係は一段と強固になる」とも指摘するなど、安全保障面で米国に頼る日本の立ち位置を念頭に、貿易で譲歩させ得点を稼ぎたい思惑が透けてみえる。

 日本の牛肉関税(38.5%)を米国が問題視するのは、市場で競合するオーストラリア産との差が拡大している焦りが背景にある。

 2015年の日豪EPA発効で豪州産の関税は段階的に軽減され、冷凍品では18年目にほぼ半減する。豪州産の対日輸出は16年度に年約27万8000トンで首位。米国産は約20万8000トンで2位だが、関税が維持されるため今後さらに不利になる。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が発効すれば16年目に9%まで下がるはずだっただけに、離脱したトランプ政権に対する生産者の視線は厳しい。米国は2国間交渉でTPP以上の譲歩を勝ち取り劣勢を挽回したいとみられる。

 米国の圧力をはね返すため日本が注力するのが、巨大自由貿易協定(メガFTA)交渉だ。大詰めを迎えた日欧EPAや米国を除く11カ国でのTPP発効が実現すれば、合意内容が事実上の国際水準になるため、「米国がTPP以上の譲歩を求めた場合に牽制(けんせい)するカードになる」(通商筋)。

 日米経済対話の交渉が今後本格化する中、特に大詰めを迎えた日欧EPA交渉を早期に妥結できるかが日米間の貿易摩擦を押さえ込むカギを握りそうだ。