都議選、豊洲問題で苦悩の候補者 説明不足・核心に触れず…中央区の有権者の判断は

 
選挙戦最終日、多くの有権者が候補や応援弁士の訴えに耳を傾けた=1日午後、東京都千代田区(納冨康撮影)

 東京都議選は1日、9日間の選挙戦の最終日を迎え、候補者たちが最後のお願いに走った。小池百合子知事(都民ファーストの会代表)による「市場両立案」で揺れる築地市場がある中央区では定数1をかけ、都民や自民の新人ら5候補が激突。街頭演説で都民候補は「築地ブランドを守る」といいながらも両立案の内容は説明せず、自民候補は公約の豊洲市場(江東区)への早期移転には踏み込まなかった。ご当地ならでは複雑な胸中が垣間見えた訴えとなった。

      ■課題が山積

 「私は小池百合子知事とともに築地ブランドを守っていきます。築地を守るためにも当選しなければならない」。都民新人の元区議、西郷歩美氏(32)は最終日の最初の街頭演説場所に築地市場近くを選び、マイクを握った。

 だが、肝心の市場両立案をめぐっては「都民ファーストの会として新たなプランを出しているところだが、書類が膨大。街頭演説で一つのこと、例えば財政のことを話すと不安点も出てきて理解も難しい」。選挙後、対話のための集会を密に開くという。

 小池氏は告示直前、築地市場跡地を売却せず保有し、市場機能を持った「食のテーマパーク」として再開発すると表明。高い維持管理費がかかる豊洲市場を持つ市場会計を黒字にするには、築地跡地を貸すなど活用する必要があると主張する。しかし、豊洲整備費のうち借金として残る約3600億円の返済の財源が決まっていないなど、検討課題が山積している。

 「中央区は移転問題など都政の大きな課題に直面している。地域とつながり、実行力、判断力を持って結果を出すのが自民党です」。自民新人の元区議、石島秀起氏(57)は夕方、甘酒横丁の演説で自民の実績を強調したが、自民公約の早期移転には触れなかった。

 両立案については報道陣に「具体的な内容も財源の根拠も示さず、選挙用だ。築地の政治利用に憤りがある」。その一方、中央区で自民候補として戦う上での複雑な心境も口にした。

 「築地のみなさん、再整備を希望されてきた。再整備できればしていきたい。ただ、簡単にできるものではないでしょう」

      ■別テーマも

 無所属新人の1級建築士、森山高至氏(51)は豊洲移転反対、築地市場再整備を訴える。小池氏が立ち上げた都の市場問題プロジェクトチーム(PT)の元委員。同様に築地再整備を掲げる共産党が告示前に公認候補を取り下げ、森山氏の支援に回った。

 この日午前、築地市場近くで行った演説はすべて、市場問題に割いた。「世界中から多くの人が集まる。日本人にとっても文化を再発見できる。もう一歩で築地再生。背中を押してください」と訴えた。

 自民を離党して都議選に臨んだ無所属現職の立石晴康氏(75)も築地再整備派。取材に「市場問題は非常に大きなテーマで自分の中では中心に置いている。ただ、市場関係者以外の多くの有権者の関心は保育所増設など生活者目線のテーマにある」と語った。

 街宣車に乗って区内を走り回り、「即戦力」「実績」など現職の強みを生かしたアピールを繰り返した。中央区ではこのほかに、諸派新人の斎藤一恵氏(48)が立候補している。