日欧EPA、期限切り日本の譲歩狙う? チーズめぐり互いに譲れぬ戦い

 
日欧EPAに関する自民党対策本部長の西川元農相(左)から申し入れを受ける安倍首相=4日午後、首相官邸

 EUが、6日の定期首脳協議を前に日本とのEPA交渉が大枠合意に達するとの見通しを示したのは、期限を区切ることで日本に譲歩を迫る思惑がありそうだ。欧州産チーズの関税では、全品目の撤廃を求めるEUと一部品目にとどめたい日本との対立が続く。日本は他の農産物の譲歩案も組み合わせて理解を得たい考えだが、妥協点を見いだせるかは予断を許さない。

 安倍晋三首相は4日の日欧EPAに関する主要閣僚会議で、「国益にとってベストの結果となるよう、最後まで全力で交渉に当たってほしい」と指示した。

 政府はモッツァレラなどのソフトチーズを成長産業に育てようと、補助金や技術指導で支援してきた。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)では関税を現状維持し、一部の参加国にはプロセスチーズの低関税輸入枠を設けて合意した。

 日欧EPAでもソフトチーズの関税撤廃は可能な限り避けたい考え。これまでの交渉では、同様の低関税枠を含むいくつかの選択肢をEU側に提示してきた。

 一方、世界のチーズ生産の約半分を占める最大の産地であるEUは、ウクライナ問題でロシアが欧州産チーズに禁輸措置を取ったことで在庫があまり気味になり、日本への輸出が拡大することに対する期待は大きい。世界的にブランド力が強いソフトチーズを中心に全品目の関税撤廃は交渉の重要課題で、市場開放を一部品目にとどめる日本の妥協案には耳を傾けない構えをみせる。

 EUはチーズなど農産物の市場開放に応じれば、日本が求める日本車の輸入関税の早期撤廃を受け入れる姿勢だ。交渉では、大枠合意後に協議を先送りする企業と進出先国との紛争処理手続きなどを除き、残る項目ではほぼ決着がついたもようだ。

 政府は懸案のチーズを単独ではなく、他の品目との「パッケージ」(山本有二農林水産相)で決着させたい考え。ただ、EUが完全撤廃を譲らない場合、国内生産者を切り捨てた決着か、大枠合意見送りかで厳しい選択を迫られる。

(田辺裕晶、高木克聡)