日欧EPA大枠合意 Q&Aでみる特徴 世界GDPの28%の巨大経済圏 TPP漂流の危機感が後押し

 

 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が大枠合意した。協定の特徴についてまとめた。

 Q どのような協定か

 A 関税の撤廃や引き下げに加え、自治体・公的機関の調達への参加や地名を商品名に使う産地ブランドの保護など27分野にわたる幅広い分野で共通ルールを定め、経済関係を強化するものだ。発効すれば世界の人口の約9%、国内総生産(GDP)の約28%を占める巨大経済圏が生まれる。

 Q 大枠合意とは何か

 A 27分野のうち、関税など双方の関心が高く協定の中核を占める分野で協議が決着する状態を「大枠合意」と呼んでいる。合意時期を早めるため日本側が提案した。投資をめぐる企業と進出先国との紛争処理手続きなど、見解の隔たりが大きく時間がかかる問題は大枠合意後に先送りする。

 Q いつから検討していたのか

 A 交渉は2013年に開始。当初は15年末の合意を目標に掲げたが実現できず、再設定した16年末も見送った。年明けからは期限を決めず「可能な限り早期」の合意を目指し、3度目の正直で妥結した。

 Q なぜ今回はうまくいったのか

 A 英国のEU離脱やトランプ米政権の誕生で、自国の利益を最優先し貿易を制限する「保護主義」の動きが強まった。自由貿易を推進したい日欧はこうした状況に危機感を持ち、交渉を加速。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が度重なる交渉の遅延で大筋合意が後ずれした結果、米国の離脱宣言で発効の見通しが立たなくなったことも妥結を急いだ背景にある。

 Q 日本が譲歩したのか

 A 日欧双方が譲歩した。日本はEUがこだわったチーズ関税の全面撤廃は回避したが、TPPで現状維持を勝ち取ったソフトチーズを含む低関税の輸入枠を受け入れた。逆に、産業界の要望が強かったEUの日本車関税撤廃は発効7年後の実施を引き出した。

 Q 悪影響はない?

 A 安くて高品質な欧州産農産物が大量に流入すれば、国内の農家や生産者は厳しい競争を強いられる。チーズは政府が補助金を付けたり技術指導をしたりして成長産業化に力を入れていたとはいえ、“本場”の欧州産に勝てるかどうか不安視される。政府は大枠合意を受け、打撃を受ける農家が生産を続けられるよう支援策の検討に入る。