ミャンマー政権と中国が関係強化 インフラ整備などで思惑一致

 
ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相(左)と中国の習近平国家主席=5月、北京の人民大会堂(共同)

 インド洋に面したミャンマー西部ラカイン州と中国内陸部の雲南省を結ぶ原油パイプラインが5月に稼働した。アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相主導の政権は中国の投資をてこにインフラ整備を進めたい考えで、エネルギー供給ルートの多角化を狙う中国と思惑が一致している。

 ミャンマーは軍政時代に中国と蜜月関係を築き、2011年の民政移管後は経済制裁を緩和した欧米に接近、中国依存からの脱却に動いた。だが、16年発足のスー・チー氏の政権はイスラム教徒の少数民族ロヒンギャの迫害問題で欧米との関係改善が停滞、内政問題として口出しをしない中国の存在感が再び増している。

 目に見える利益を

 パイプラインはラカイン州チャウピューと雲南省・昆明をつなぎ全長約1420キロ。輸送能力は年2200万トンで、昨年の中国の原油輸入量の約6%に当たる。

 習近平国家主席が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の重要プロジェクトの一つ。中東・アフリカ産原油がマラッカ海峡を通さずに運べるため、中国のエネルギー安全保障上、大きなメリットがある。

 一方、ミャンマーは通行料や土地使用料の収入が見込める。チャウピューでは中国企業が経済特区や深海港の開発権を得て、中国主導で雲南省までの道路や鉄道を敷く構想もある。遅れが目立つチャウピュー周辺のインフラ整備に期待が高まる。

 習氏は、北京で5月に開かれた一帯一路の国際会議に出席したスー・チー氏と会談し「関係を進展させ、目に見える利益をもたらすため、正しい方向に動くべきだ」と述べ、インフラ建設での協力を約束した。

 武装勢力との仲介役

 スー・チー氏が国政の最優先課題に掲げる少数民族武装勢力との和平交渉でも、中国の影がちらつく。中国は、国境周辺を地盤としてミャンマー政府と対立する武装勢力に民族的背景から影響力があり、“仲介役”を買って出ようとしている。

 5月の和平会議前には、ミャンマー政府との停戦協定に署名していない7勢力の会議参加を中国が後押し。中国外務省の孫国祥アジア問題特使がミャンマー国軍のミン・アウン・フライン総司令官とネピドーで面会し、国軍が参加を渋っていた一部勢力も含め、2日前に参加が認められた。

 ミャンマーの政治評論家、ヤン・ミョー・テイン氏は「中国は少数民族問題の和平プロセスで役割を果たせる唯一の国として、経済権益の獲得交渉を有利に進めようとしている」と指摘した。(ヤンゴン 共同)