内閣改造、手堅い布陣に 人心一新で安保・経済対策強化を

高論卓説

 まさに盆暮れが同時に訪れたかのような政界の1週間だった。安倍晋三政権の支持率の急降下は、国家的な危機であり、ここから脱する方策を講じることが急務である。まずは3日の内閣改造・自民党役員人事は手堅い布陣に徹することである。

 稲田朋美氏の防衛大臣起用は、安倍政権の最大の汚点だ。辞任した稲田氏は、保守層の議員や識者から人気の高い政治家であるが、期待に応える努力をどれだけ行い、覚悟を持って大臣という職にあったのか、疑問である。次の内閣改造で、第2次安倍政権以降、6回目の「組閣」となり、「玉不足」の感は拭えないが、人を見抜く力が鈍らないよう、努めてもらいたい。

 特に、安倍政権の最重要政策の一つである、北朝鮮による拉致問題の担当閣僚は、これまで拉致問題解決のために尽力してきた政治家を充てるべきだ。自民党と共同歩調をとる「日本のこころ」の中山恭子代表の入閣などを本気で考えるべきではないか。安倍首相の信任厚い、加藤勝信内閣府特命担当大臣は、現在6つの担当分野を抱える。それをやりこなす能力を持ち合わせているのかもしれないが、加藤大臣が担当する働き方改革や女性活躍政策、キッズウイークなどをみる限り、どれだけ真剣に取り組まれたのか疑問だ。このような不信感は払拭すべきであり、それができなければ、内閣改造も国民の信頼回復に寄与するものとはならない。

 「加計(かけ)学園問題」や防衛省の日報隠蔽(いんぺい)問題などは、今後も、真相解明が必要ではあるが、その一方、安倍政権が、内閣改造による人心一新を行うことで、国民のために何をするかが、より重要であるはずだ。

 私は大きく2つのことが急務の課題であると思っている。

 一つは、日本を取り巻く国際情勢の中で、安全保障態勢を、米国とともに強固なものにすることである。これは、信頼される防衛大臣の下、防衛能力強化のための方策、そのための予算増額が必要であろう。8月末の来年度予算の概算要求に向けて、本気で取り組めるかが問われる。

 もう一つは経済政策である。第2次安倍政権発足以来の日銀の物価上昇目標を、また先延ばしした。経済の回復は安定基調にはないということである。その大きな要因は、個人消費が増えていかないことにある。平均寿命が延びたことによる「老後の長期化」とそれを支えるはずの財政基盤が、少子化により脆弱(ぜいじゃく)なものになっていることが、根本的な要因だ。

 消費税増税まであと2年であるが、増える高齢者とそれに伴う社会保障費の増大を考えれば、2%の増税、つまり5兆円の財源確保で解決できるのだろうか。

 また人口減の社会では消費の拡大は難しく、根本的な制度の再設計が必要であることは明らかであるはずだ。そこに真剣に取り組まない限り、国民の不安は払拭せず、個人消費も増えない。プレミアムフライデーやキッズウイークなど、場当たり的な策で回復すると本気で思っているのなら、その意識を改めない限り、安倍政権への信頼回復は見込めない。

 安倍政権は、国際的に日本の信用を高めることに力を発揮してきた。外交政策は評価に値するものであることは間違いない。しかし、国民の日々の生活に関わる政策については、明らかに手薄になっていた。今後の政権運営では、首相自身が「苦手」とも思える分野に、しっかりとした担当者をつけて政策を実行することが必要である。

【プロフィル】細川珠生

 ほそかわ・たまお ジャーナリスト。元東京都品川区教育委員会教育委員長。テレビ・ラジオ・雑誌でも活躍。千葉工業大理事。一児の母。父親は政治評論家の故細川隆一郎氏。