2050年の世界 アジアが経済の中心に
論風□青山学院大学特別招聘教授・榊原英資
米大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は2017年2月13日、「2050年の世界」の最新リポートを発表している。
2世紀ぶりの復権
このリポートによると、42年までに世界経済の規模は倍増し、中国が市場為替レートベースでも、30年までには世界最大になるとされている(購買力平価=PPP=ベースではすでに中国は米国を抜いて世界のナンバーワン)。また、50年までにはインドは米国を抜き世界第2位に、インドネシアも中国、インド、米国に次ぐ世界第4位の経済大国になると予測されている。ちなみに日本はブラジル、ロシア、メキシコに次ぐ第8位になっている(順位はPPPベース)。
50年までには、重要経済大国のうち6カ国はいわゆる新興市場国になり、その国内総生産(GDP)は欧州のドイツ、英国、フランスなどを大きく超えることになる。
もっとも、19世紀初めまでの2大経済大国は中国とインドであり(英経済学者アンガス・マディソンの推計によると1820年時点で世界のGDPの28.7%は中国、16.0%はインドだった)、その意味では、中国とインドは新興(emerging)ではなく、再興(re-emerging)市場国というべきであろう。19世紀からさらに遡(さかのぼ)ると、中国、インドのシェアはより大きくなり、1500年前後には、両国で世界のGDPの70%近くを占めていたとされている。
最も豊かな地域に
また、2016~50年の年平均成長率では、ベトナムがトップで5.0%、予測GDP世界順位は現在の32位から20位まで上昇し、3兆1760億米ドルに達するとの予測だ。他のアジア諸国(インド、バングラデシュ、パキスタンなど)も平均4%以上の年間成長率を達成し、そのGDPも世界の25位以内に入ってくることになる。
1989年、独経済史家のアンドレ・グンダー・フランクは「リオリエント」(2000年に藤原書店が邦訳出版)を著し、世界経済の中心が次第にアジアに戻ると述べたが、まさに2050年までの世界経済の展開はアジアを中心に進むことになるのだ。
PwCの予測によると、50年でのPPPベースのGDPのトップ25カ国のうち、11カ国がアジア諸国なのだ。中国とインドを中心に、東南アジア、南アジアの国々が大きくGDPを拡大してくるというわけなのだ。第二次世界大戦前に欧米によって植民地化されたアジアは大戦後次々と独立し、21世紀には世界で最も豊かな地域になってきたのだ。
次はアフリカ
今後、アジア地域に次いで高い成長率を達成すると予測されているのがアフリカ地域。ナイジェリア、エジプト、南アフリカ共和国などは16~50年にはいずれも平均4%前後の成長率を達成するとされている。
50年にはナイジェリア、エジプトはPPPベースのGDPで世界のナンバー14、ナンバー15になり、フランスに次ぐGDPを有するようになるとされる(50年のPPPベースのGDPはフランスが4兆7050億ドル、ナイジェリアが4兆3480億ドル、エジプトが4兆3330億ドル)。
世界の成長センターは50年以降は次第にアジアからアフリカに移る可能性が高いという。というのは、とくに50年以降は急速にアフリカの人口が増加し、世界人口増加分の8割をアフリカが占めると予測されているのだ。アフリカ諸国が自国経済の多角化、ガバナンス水準の向上やインフラ整備に成功すれば、21世紀後半はアフリカの世紀になるということなのだ。
国連の人口展望によると、15年から2100年の人口増加のほとんどはアフリカ諸国。ニジェールは952%、ザンビア547%、タンザニア459%、ウガンダ420%などとなっている。
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【プロフィル】榊原英資
さかきばら・えいすけ 東大経卒、1965年大蔵省(現財務省)入省。ミシガン大学に留学し経済学博士号取得。財政金融研究所所長、国際金融局長を経て97年に財務官就任。99年に退官、慶大教授に転じ、2006年早大教授、10年4月から現職。75歳。神奈川県出身。
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