GDP 0.44%押し下げ 北朝鮮有事、10円円高の場合

 

 北朝鮮情勢をめぐり有事となれば、安全資産とされる円が買われて一気に円高が進み、企業業績や個人消費に打撃を与える恐れがある。国内総生産(GDP)が0.4%程度、押し下げられるとの試算もあり、日本経済への悪影響は避けられない。

 第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、足元で1ドル=110円程度の円相場が有事には90円台へ突入する可能性があるとみる。企業の生産拠点は海外展開が進んでいるため輸出量の減少は限定的とみられる。

 だが、「企業や消費者の心理の冷え込みは大きい」(永浜氏)ため、GDPの7割を占める設備投資や消費が落ち込み、企業のドル建て利益も目減りする。永浜氏は「10%の円高で翌年のGDPが0.44%押し下げられる」とはじく。

 旅行や物流は直接打撃を受ける。JTBの推計によると7月15日~8月31日の、サイパンと合わせたグアムへの旅行者数は12万9000人。有事にはツアー中止に加え「海外旅行全体の需要落ち込みに広がる恐れがある」(JTB)。また、海運も「有事で海上輸送の荷量が減れば貿易や経済活動に影響が出る」(川崎汽船)と警戒を強めている。

 ■北朝鮮問題の有事で想定される日本経済への影響

 ・1ドル=90円台まで円高が進む恐れ

 ・1ドル=10円程度円高が進めば、GDPが0.4%程度押し下 げられるとの試算も

 ・旅行会社がグアムツアー中止。海外旅行全体の冷え込みも

 ・航空会社がグアムへの就航を取りやめ。海外旅行者の減少で利用客数が低迷する恐れ

 ・海運会社が日本近海の航行を取りやめるなどして、業績が下押しされる可能性