石油業界の競争戦略見直し 経産省、高付加価値製品の増産促す
経済産業省が石油元売り業界の競争力をてこ入れするため、各社にナフサなど付加価値の高い製品の生産拡大を促す。石油の需要減少に歯止めがかからない中、すでに3陣営に集約されつつある業界に再編余地は少ない。生き残りを懸けた戦略の見直しだが、多額の設備投資が必要になるなど課題も多く、青写真通りいくかは見通せない。
「製油所の統廃合は当然検討している。本年度中にある程度はっきりさせたい」。JXTGホールディングスの大田勝幸取締役は8月の決算記者会見で明言した。
同社はJXホールディングスと東燃ゼネラル石油が4月に統合して発足した最大手で、製油所の効率化が喫緊の課題。ただ「地元との関係もあり時間がかかる」と悩ましさもにじませた。
経産省は業界に対し一貫して原油処理能力の削減を迫り、製油所はピークだった1982年度の49カ所から2016年度には22カ所に減少。日量約590万バレルあった処理能力は約350万バレルまで低下した。だが約300万バレルの需要に対してまだ大幅な過剰状態にある。
主力のガソリンはエコカーの増加で需要の減少が止まらず、電気自動車(EV)が本格普及すれば需要が一段と細るのは必至だ。
業界では、2位の出光興産と4位の昭和シェル石油の合併が出光創業家の反対でストップしているものの、経産省による「官製再編」は総仕上げの段階にある。
企業単位の再編が限界に近づきつつあり、経産省は新たな戦略を考えざるを得なかった。同省幹部は「製油所能力を世界と戦える水準まで持っていく」と強気だが、表情には焦りものぞく。
利益確保に苦労する各社にとって高付加価値製品の生産強化に必要な設備投資は重い負担となる。「利益が出れば将来、研究開発やインフラ整備に投資したい」(コスモエネルギーホールディングス幹部)のが本音だが、そうそう余裕はない。
国内需要の回復が期待できない状況下で、業界が活路を見いだそうとしているのが、経済成長が続くアジアなどへの輸出。日本の輸出比率は現在2割弱。約5割ある韓国などと比べると外需の取り込みで大きく出遅れている。
石油業界に詳しい大手銀行のアナリストは「競争力のある製品を増やし海外勢と競合できるかが鍵。各社、単独では無理で連携が不可欠だ」と指摘している。
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