アベノミクスを数字で見ると…バブル期上回る雇用水準 女性就業者200万人増
安倍晋三首相が自民党総裁に返り咲いて9月で5年。この間、看板の経済政策「アベノミクス」で日本経済の姿は様変わりした。企業業績は改善し株価も上昇、雇用関連の統計はバブル期を上回る水準だ。一方、個人消費や物価上昇率は力強さを欠く。物価が持続的に下落するデフレ状態ではなくなったが、「デフレ脱却」とまでは言い切れない。(田村龍彦)
バブル期抜く景気拡大
「安倍内閣はこれからも経済最優先。雇用を増やし、賃金を上げる。経済の好循環をさらに加速することでデフレ脱却を成し遂げる」
安倍首相は8月3日、第3次安倍第3次改造内閣発足後の記者会見で力を込めた。平成24年12月に第2次安倍政権が発足して以降、大型の財政出動や大規模な金融緩和で景気回復を後押ししてきた。
円安や法人税減税などで企業業績は改善。法人企業統計調査によると、27年度の企業の経常利益は過去最大の68兆2201億円で、24年度(48兆4611億円)から約20兆円増えた。
日経平均株価は「2万円」を何度も回復。足元では、北朝鮮情勢の緊迫化や米景気の不透明感などが不安視されているが、25日終値は1万9452円61銭と24年末より約9千円高い。
内閣府の研究会は6月、景気の拡大が24年12月から今年4月まで53カ月間続いているとの認識を示した。「バブル景気(51カ月)」を抜き、戦後3番目の長さ。29年4~6月期の名目国内総生産(GDP)は実額で545兆円と、24年10~12月期(492兆円)から50兆円以上増えた。
正社員求人初の1倍超え
改善が顕著なのが雇用だ。求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率は6月は1・51倍で、バブル期の2年7月(1・46倍)を上回った。リーマン・ショック後に急増した非正規社員だけでなく、正社員の有効求人倍率も1・01倍と初めて1倍を超え、24年11月(0・49倍)から大きく改善している。
15~64歳の「生産年齢人口」の減少という構造的要因があるとはいえ、企業の業績が回復し、採用意欲が高まっている。
大学卒業者の就職率は29年3月卒が97・6%で、24年3月卒(93・6%)から上昇。政府が「女性活躍の推進」を掲げる中、女性の就業者数も政権発足前から約200万人増えた。
一方、デフレ脱却には賃金の上昇が欠かせない。
政府は経済界と労働界の代表と政労使会議を開き、賃上げを要請。大企業の賃上げ率は4年連続で2%を上回った。ただ、中小・零細企業を含め、上昇の勢いが強いわけではない。29年夏の大手企業などのボーナスも5年ぶりに減少した。
消費支出は下回る
GDPの約6割を占める個人消費は明るさが見えつつあるが、29年6月の1世帯あたり消費支出は26万8802円で、24年11月を下回った。29年7月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は7カ月連続で前年比プラスだが、日銀が目指す2%にはほど遠い。
安倍政権は経済再生と財政再建の両立を目指す。28年度の税収は24年度から10兆円以上増加したが、7年ぶりの前年割れになるなど足踏みもみられる。
日本総合研究所の湯元健治副理事長は「(アベノミクスは)円安で企業業績や株価を上げることに成功したが、過度に金融政策に依存してきた。やるべきは成長戦略で、潜在成長率を高める必要がある」と話す。国家戦略特区などを用いた規制緩和も道半ばだ。
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