森の探検や出張授業で次世代に「水育」
eco最前線を聞く□サントリーHD サステナビリティ戦略部長・内貴研二氏
飲料大手のサントリーホールディングス(HD)は、子供たちに水や水を育む森の大切さなどを知ってもらうための活動に取り組んでいる。2004年に開始した次世代向け環境教育「水育」では、大自然の中で森を探検し、実際に水に触れたり、全国の小学校で行われる出張授業を通じ、自然の大切さを体感してもらうのが狙いだ。水育の運営に携わる内貴研二サステナビリティ戦略部長は「水を守る次世代の担い手を育てたい」と力を込める。
社会全体で考える
--水育を始めたきっかけは
「当社は『水と生きるサントリー』というコーポレートメッセージを掲げている。飲料メーカーのビジネスは水に依存している。このため、水を育む森林保全活動を03年から取り組んでいるが、当社だけでは限界がある。未来に水を引き継ぐためには、水や森林をどうやって守るかを社会全体で考えていく必要がある」
--水育にはどんなものがあるのか
「1つが『森と水の学校』だ。小学3~6年生とその保護者を対象に、『サントリー天然水』の水源周辺の森がある白州(山梨県)、奥大山(鳥取県)、阿蘇(熊本県)で行う環境教育プログラムで、04年に開校した。実際に森に入り、水を育む大切さや水資源の貴重さを体験してもらう。8月末までの累計の開催数は637回、参加者数は約2万3000人を超えた」
--森と水の学校のほかには
「小学4~5年生が対象の『出張授業』だ。講師を派遣し、小学校の教室で行う。同プログラムは映像や実験を通じて、自然の仕組みや大切さを学ぶことができるように作られている。首都圏、京阪神、中京エリアを中心に06年の開始以来、8月末までの累計の参加者数は約12万人(1572校)にのぼる。水育は日本だけにとどまらない。当社グループの事業活動は世界に広がっており、環境活動についてもグローバルに推進していく必要がある。15年からベトナムで水育を開始した」
国ごとの課題に合わせて
--日本での水育との違いは
「日本で行っている水育のプログラムを海外に持ち込むことはできない。国ごとに水に関わる社会的課題が水質汚染だったり、水不足だったり異なるためだ。ベトナムでは『水を汚さない、病気から身を守る』ことを学ぶ授業を行ったり、サントリーペプシコベトナム(ホーチミン市)の工場見学会を行うなど水質保全に取り組む姿勢を学ぶプログラムになっている」
--ベトナム以外では
「米ビームサントリー(米イリノイ州シカゴ)はケンタッキー州の蒸留所で、地元大学の専門家らを交えて水源保全活動を16年6月から展開している。また、オランジーナサントリーフランス(パリ近郊)は9月中旬、メジュー工場の近隣にある自然公園と提携し、今後、森林保全活動や子供向け環境教育プログラムの支援に乗り出す」
--今後の展開は
「グローバル化は急速に進んでおり、海外グループ会社も水への思いを共有する必要がある。こうした理念を共有するため、4月に海外グループ会社のCSR担当者を集めた会議を実施した。ただ、水資源の保全は国や地域によって施策が異なる。このため、現地の実態を把握しながら、海外での水資源の保全活動を広げていきたい」(松元洋平)
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【プロフィル】内貴研二
ないき・けんじ 京大文卒。1981年サントリー(現サントリーホールディングス)入社。広報部、食品事業部、2005年CSR推進部長を経て、17年4月から現職。福岡県出身。59歳。
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