「ポスト安倍」それぞれの秋 岸田氏、禅譲狙い? 石破氏は首相牽制
衆院選安倍晋三首相は衆院選で自民党総裁として前人未到の国政選挙5連勝を果たした。22日夜のNHK番組で来年秋の総裁選対応について「全く白紙だ」と述べた首相だが、総裁3選に大きく踏み出したのは間違いない。次の党総裁と目される「ポスト安倍」の岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、野田聖子総務相、河野太郎外相は勝利に向けそれぞれ奔走したが、求心力が高まる首相との距離や党内基盤の強化が課題になる。(小川真由美)
■岸田氏
「安倍総裁を先頭に戦い、多くの皆さんに支持を得た」。衆院選を受け、岸田氏は22日夜のNHK番組に党の先陣を切って出演し、こう述べた。政調会長として北朝鮮情勢や少子化対策などを訴えてきた岸田氏は他派閥候補の応援にも積極的に入った。
一方、「派閥のメンバーを当選させることができずに首相が目指せるのか」との派内の声に押され、岸田派所属の堀内詔子氏が無所属で出た山梨2区に応援に入った。派閥領袖として攻勢に出なければ、存在感の低下は免れないからだ。
二階俊博幹事長率いる二階派の無所属候補との分裂選挙を制した岸田氏は、首相を支え「禅譲」を見据えるが、これまで「首相のスポークスマン」(岸田氏周辺)に徹し、個性は埋没している。岸田氏はNHK番組で総裁選の対応を問われ「まだ1年近く先の話だ。一寸先は闇。何が起きるか分からない」と曖昧に答えた。「安倍3選」が濃厚になる中、引き続き間合いに苦労しそうだ。
■石破氏
首相と距離を置く石破氏は、石破派所属の候補の地元に丸1日張り付き、十数カ所で演説することが多かった。解散前の同派議員は参院議員を含め20人。総裁選の出馬に必要な推薦人(20人)を確保するため同志の落選は自身の今後に直結する。
石破氏は地方創生や安全保障に多くの時間を割いて政策通を強調した一方、「国民が怒っていることが分からなかったら、もう自民党ではない」と首相を牽制した。22日夜の民放番組では「党の中で一つしか考え方がないこと自体がおかしい」と述べ、総裁選出馬に重ねて意欲を示したが、首相の5連勝で、対抗するのは難しい情勢となった。
■野田氏
女性初の首相を目指し、来年の総裁選出馬を公言している野田氏は女性候補者を中心に応援に入った。森友・加計学園問題を踏まえ「首相には全くしがらみはない」と訴え、首相を支える閣僚の役目を果たした。
同時に「自分たちの反省からスタートしなければならない」と首相への注文も繰り返した。平成27年の前回総裁選は推薦人を集められず立候補を断念した。現在は首相と付かず離れずの姿勢を貫くが、次回までに党内の支持を集められるかどうかは見通せていない。
■河野氏
党内で「次の総裁選に出る気だ」との声が出ているのが河野氏だ。8月の外相就任直後の記者会見で、総裁選出馬について「一歩一歩歩きながら考えていきたい」と否定しなかった。選挙戦では「動画メッセージ送付のお知らせ」と題したFAXを約40人の候補者に「頼まれていない」(関係者)のに一方的に送ったという。
河野氏が所属する麻生派は7月に党内第2派閥に躍進したが、麻生太郎副総理兼財務相の有力な後継者は見当たらない。急進的な改革志向で自民党の異端児といわれた河野氏が緊迫化する北朝鮮対応で成果を挙げれば、ポスト安倍が射程に入りそうだ。
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