「小池さんの『排除』」有権者には強すぎた…希望の党、候補が苦戦を振り返る

衆院選
縁起物の「勝ち虫」トンボの飾りをつけた希望のたすきを掲げる3区の櫛渕万里氏=22日、市原市の選挙事務所(橘川玲奈撮影)

 「野党が一丸にならなければいけなかった。小池(百合子)さんの『排除』という言葉も有権者には強すぎた」。投開票から一夜明けた23日、後片付けに追われる千葉県市原市の事務所で、千葉3区の希望元職、櫛渕万里(くしぶち・まり)氏は苦しい選挙戦をそう振り返った。

 一夜城のごとく結成された希望。小池代表の発言や、民進合流者の“踏み絵”と揶揄(やゆ)された政策転換などで期待は急速にしぼんだ。政権批判票は立民に拾われ、県内の選挙区は全敗に終わった。

 希望で比例復活したのはいずれも、元民進で選挙区に地盤のあった前職。一方、櫛渕氏のような、いわゆる「落下傘候補」らは、党勢の退潮に加え知名度や準備の不足から得票は伸び悩んだ。

 櫛渕氏は「落下傘から出馬し、まさにしがらみのない立場で戦えた。だが、地盤もなく大型の組織体制が作れなかった」と悔やむ。

 2区の竹ケ原裕美子氏も同じ悩みを抱えた。竹ケ原氏は静岡県で産婦人科医をしているが、出身地の本県で出馬。比例復活もかなわず、「地盤と実績を誇る自民候補に歯が立たなかった」。

 県組織がない希望は民進県連がサポートしたが、選挙後の政治活動については「民進県連で協力する方針にはなっていない」という。櫛渕、竹ケ原両氏も今後の政治活動については、拠点を本県に置くのかも含め「これから考えたい」としている。

 「与党への対抗が本来の野党の役割だったのに、野党同士で軋轢(あつれき)が生まれ、自公が楽な選挙になってしまった」。民進千葉県連代表の長浜博行参院議員は苦言を呈した。野党分裂が結果的に自公の“漁夫の利”を招いた。「自公の政策が受け入れられた結果ではない」と述べるのがやっとだった。

 小池氏の“舌禍”はもとより、希望合流を決め野党分裂を招いた民進代表の前原誠司氏の判断について、「判断から選挙までの時間が短く、説明が不十分だったため、さまざまな問題が起きたのではないかと思う」と振り返った。

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 民進の混乱は県連の存続にも暗い影を落とす。衆院議員がいなくなり事実上解党し、県組織の機能は宙に浮く形となった。ある市議は「どんな道が残されているのか分からない。党本部の判断を待つ以外ないが、希望への合流を決めたときのように、地方議員への説明はないのではないか」といぶかる。

 長浜代表は県連の今後について、「常識的に考えれば存続は難しいが、政治の最前線を形作っているのは地方議員。地方議員に方針を説明する場は必ず設けたい」とした。2年後には統一地方選があるし、参院選もやってくる。地方組織を早急に再構築しなければ、致命傷となりかねない。

 また、分散した野党勢力について、「選挙戦を終えて冷静になれば、野党同士で争う意味がない。戦う相手が与党であると見えてくるはずだ」と、旧民進を軸に再編されるとの見方を示した。

 ただ、こうした展望を有権者が受け入れるかは未知数だ。安易な野党再編は反感を招きかねず、「選挙のためだけの集合離散ではないか」との印象を与える。地方議員に対して以上に、有権者に対して丁寧な説明が求められる。