TPP11首席交渉官会合が千葉で開幕、合意へ3つの関門
米国を除く環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加11カ国の首席交渉官会合が30日、千葉県浦安市で始まった。米国の強い要求で導入したものを中心に協定の一部を棚上げする「凍結」項目をどの程度認めるかの最終調整に入る。ただ、11月10日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、大筋合意に達するには3つの関門が待ち構えている。
(1)凍結項目の集約は?
「交渉は最後のステージに移る。建設的で柔軟性を持って議論を進めたい」
首席交渉官の全体会合に先立って30日に始まった作業部会で、議長を務める日本の交渉官がこう呼びかけ、作業の加速を促した。
各国の凍結要望は9月の前回会合時点で約50項目に上った。協定が掲げた高水準の自由化を保つため、今回は項目数を半分程度まで絞り、大筋合意時には「10項目程度に抑えたい」(交渉筋)。医薬品データの保護期間を実質8年間とする規定や、特許期間の延長措置は既に凍結が固まった。
一方、凍結どころか修正を求める国もある。ベトナムは繊維製品の関税撤廃・削減対象を制限する原産地規則の見直しを要求。新政権が誕生したニュージーランド(NZ)は外国人の中古住宅購入禁止を例外として認めさせたい構えだ。
日本はいずれも協定の大幅修正につながると慎重で、30日にはNZと個別協議した。関係者によると、NZ側は再交渉せずに済むよう新政権の説得を続けていると説明したもようだ。NZヘラルドの報道では、発効前の法制化により協定の範囲内で購入規制を実施できないか検討を始めた。
(2)日米FTA要求は?
日本の交渉団が強く懸念するのが11月5日からのトランプ米大統領訪日だ。日米自由貿易協定(FTA)の交渉入りを強く迫られた場合、TPP11カ国の交渉への影響も避けられない。
TPPは米国の離脱まで日米両国で域内の国内総生産(GDP)の約8割を占め、「実質的には日米FTA」との指摘もあった。その日米が別途交渉を始めれば米国のTPP復帰は望み薄となり、早期合意を目指す11カ国の機運が白ける。
(3)国内農家の反発は?
日本国内でもバターなどの低関税輸入枠について見直しを求める意見が農業関係者に根強い。米国の参加を前提に設定した輸入枠をNZなどが埋めれば、米国のTPP復帰や日米FTAなどで上積みを迫られかねない。
政府は交渉を停滞させないため、こうした声を表に出さない見通しだが、妥結後の国内承認手続きに影響が出る恐れがある。
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