【マネー講座】《NISAを学ぶ》(1)〈投資の利益は非課税〉資産運用で「手取り」に影響

 

 株式や株式投資信託などに投資を行い利益を得ることができた場合、原則として約2割の税金がかかります。しかしNISA(少額投資非課税制度)を使って投資を行った場合、利益は非課税となります。税制の違いによっても投資の成果は大きく変わります。本シリーズはNISAについて解説します。(大和総研 是枝俊悟)

投資の利益には原則2割の税金がかかる

 個人が株式や株式投資信託などに投資をする一番の目的は、配当・分配金や譲渡益によって「利益」を得ることでしょう。ですが、通常、個人投資家はこれらの投資によって得た利益の全額を手にすることはできません。投資に対する利益にも原則として所得税が課されるからです。

個人が株式や株式投資信託に投資を行うことで得た配当・分配金・譲渡益などの、いわゆる「投資の儲け」に対しては、所得の金額によらず、(住民税を合わせて、復興特別所得税を除いて)原則一律20%の税率となっています(※配当・分配金については総合課税を選択し、累進税率と配当・分配金の一定割合の税額控除の適用を受けることもできます)。

 簡単な例をあげると、個人投資家が100万円の株式を購入して、150万円で売ることができたら、50万円の「儲け」となりますが、このうち20%の10万円は税金として納めなければならず、税引き後の「儲け」は40万円となるわけです(簡略化のため手数料等は考慮せず、復興特別所得税を除く)。

NISAならば運用益は非課税

 これに対して、個人がNISAを使って株式や株式投資信託などに投資を行った場合は、投資によって得た配当・分配金、譲渡益が非課税となります。

 すなわち、先の例でいうと、100万円の株式を購入して、150万円で売ることができたら、50万円の「儲け」には税金がかからず、丸々利益を手にすることができるのです(簡略化のため手数料等は考慮せず)。

 NISAは2014年に、家計の安定的な資産形成の支援と経済成長に必要な成長資金の供給拡大を目的に導入された制度です。当初はNISAの制度は1つだけでしたが、16年に未成年者向けの「ジュニアNISA」が新たに創設され、さらに18年には積立投資による資産形成を支援する「つみたてNISA」も創設されます。14年に導入された元々のNISAは、現在では「一般NISA」と呼ばれることが多いようです。

 一般NISA・ジュニアNISA・つみたてNISAには、利用できる人の年齢、購入できる商品、1年あたりに投資できる限度額、投資の方法(一括投資か、積立投資か)、利益を非課税とできる期間などに違いがあり、その概要は別表の通りです。

 それぞれの制度の特徴については、次回以降詳しく説明しますが、大事なことは個人が投資を行う場合に、「NISA」というものを使えば利益が非課税になるということです。

 個人が投資によってお金を「増やす」ためには、投資対象として魅力的な株式や株式投資信託などを選ぶことも重要ですが、投資による利益に約2割の税金がかかるのか、それとも非課税なのかも「手取り」に大きな影響を及ぼします。資産運用を行う際には、ぜひ「NISA」のことを意識してください。

(※マネー講座は随時更新。次回も「NISAを学ぶ」をテーマに掲載します)

【プロフィル】是枝俊悟(これえだ・しゅんご)

大和総研金融調査部研究員
2008年大和総研入社。証券税制を中心に、税・社会保障制度等の分析を行う。著書に、『NISA、DCから一括贈与まで 税制優遇商品の選び方・すすめ方』(2016年、近代セールス社)など。

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