中国、「ビジネスマン大統領」と巨額商談 くすぶる難題は札束で“蓋”

 

 【上海=河崎真澄】北京の人民大会堂で9日、トランプ大統領と習近平国家主席が見守る中、エネルギーや航空機など米中の巨額商談が続々調印され、会場は大きな拍手に包まれた。

 8日調印分と合わせて総額2535億ドル(約28兆8千億円)にのぼった契約規模について中国の鍾山商務相は、「世界の経済貿易協力で史上最高の新記録を作った」と自賛した。

 調印されたのは、アラスカでの液化天然ガス(LNG)開発への中国からの投資430億ドルや、中国によるボーイングからの航空機300機調達で370億ドルなど、かねて交渉中の案件の“総まとめ”だった。

 中国側は数字を1カ所に積み上げることで、対中強硬姿勢を公約に掲げて1年前の大統領選で当選したトランプ氏に、貿易不均衡の解消や雇用増大など米国の世論に向けて大きな“お土産”を持たせた。ロシア疑惑や政策停滞で、支持率が落ち込んだトランプ政権には“恵みの雨”になる。

 その背景として、「2期目に入った習指導部は、政治も含む幅広い分野での対米ディール(取引)で、ビジネスマン気質が濃厚なトランプ大統領に札束外交のカードを切った」(日中関係筋)との分析がある。

 訪中前にトランプ大統領が、「巨額でひどい。金額を言うのも恥ずかしい」とまで厳しく批判した対中貿易赤字(昨年で3470億ドル)のみならず、北朝鮮問題をめぐる温度差、南シナ海や東シナ海での緊張、中国内の人権問題など、米中間にくすぶる難題を一時的にせよ、札束で“フタ”をすることにこぎつけた。

 不動産ビジネスで成功したトランプ氏との交渉において、「中国は巨額商談こそが、米国が主張してきた国際秩序や民主主義、人権問題での対中批判の矛を収めさせる戦術になると踏んだ」(同)。中国は航空機や自動車など、成長を続ける世界最大の市場を“取引の武器”にする考えだ。

 米国企業にとっても中国市場の吸引力は強大だ。10月から11月にかけ、米電気自動車大手テスラ、米交流サイト(SNS)大手フェイスブック、IT(情報技術)大手マイクロソフトなどの大物経営者が相次ぎ中国詣でし、トランプ氏訪中の“露払い”を演じた。

 習氏は9日の共同記者会見で、新たな米中経済協力計画を策定し、貿易不均衡の緩和、投資環境の改善などを継続協議する、と強調した。「札束外交」は、今後の習指導部による対外戦略の柱にもなりそうだ。