アンコールワットでVR体験 カンボジア政府、HISと共同開発
カンボジアの観光省は、カンボジア北西部シエムレアプ州にある世界遺産、アンコール遺跡群の「アンコールワット」で、スマートフォンを活用した新しいアトラクション・サービスを開始する。観光省が文化芸術省、旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)、米タイムルーパー(本社・ニューヨーク)とともに開発したバーチャルリアリティー(VR、仮想現実)のコンテンツで、アジアでは初の試みとなる。
12世紀を再現
VRとは、実際には存在しない景色や人物が、目の前に実際にあるかのように再現される仕組み。コンテンツはすでに出来上がっており、今月半ばにシエムレアプ州で開かれたカンボジア観光博でお披露目された。最終的な確認が終わり次第、提供が開始される。
今回開発されたコンテンツは、(1)アンコールワット寺院の上空からの全景の歴史的変化(2)第二回廊のかつての姿の復元(3)遺跡建設の様子-の3種類。利用者は、事前に自分のスマホに専用アプリをダウンロードし、VR観賞用のゴーグルを購入する。ゴーグルは遺跡の入り口にあるチケットブースの隣で、12ドル(約1340円)で販売される予定だ。遺跡内の指定された場所で、ゴーグルにスマホを装着してのぞくと、実際に見える景色と同じ場面で、VRが再生される。
たとえば第二回廊と呼ばれる場所のVRでは、朱色の柱や黄金の飾りが再現され、僧侶たちが沐浴(もくよく)に訪れる様子が映し出される予定だ。また、遺跡建設のVRでは、アンコールワットが建設された12世紀前半の様子を再現。建設資材である巨石を人や象がどのように運んだのかが、映画のように目の前に展開されるという。内容はいずれも、カンボジア政府の「アンコール地域遺跡整備機構(アプサラ機構)」に残る資料を基に、歴史に忠実に再現された。
9カ月で175万人
開発に協力したHISの河北有一さんは、カンボジアに勤務していた経験と、米国で出合ったタイムルーパーのVRコンテンツとを結びつけ、新しいコンテンツとして開発するために同社とグローバル契約した。
タイムルーパーは、ロンドンやニューヨークなど欧米の6都市で約50種類のVRコンテンツを作成して人気を得ているが、アジアではアンコールワット遺跡が初めてとなる。また、世界遺産での試みとしても初で、アンコールワットでの反響が注目される。
河北さんは「旅行に行って、ただすてきな写真を撮るだけではなく、歴史の深みを体験してほしいと考えた。アンコール遺跡群にはまだまだ多くの見どころがあり、今後はそこでもVRコンテンツを増やしていきたい」と話している。
アンコール遺跡群は、1992年にカンボジア国内で初めて世界遺産に指定された。カンボジアではその後、北部タイ国境にあるプレアビヒア寺院、中部コンポンチャム州のサンボー・プレイ・クック遺跡の2つの世界遺産が誕生したが、アンコール遺跡群が最も有名で人気が高い。
カンボジア観光省によると、2017年1月から9月までの間にアンコール遺跡群を訪れた外国人は約175万人。前年同期比で12%増加した。最も多いのは中国人、次いでベトナム人だ。特に中国人旅行客は急増しており、カンボジア政府は中国人誘致に力を入れ始めている。
一方でカンボジア政府は今年2月から、アンコール遺跡群の入場料金(1日券)を20ドルから37ドルへと大幅に値上げした。それでも観光客は減少しておらず、チケット売り上げは1月から9月で約7570万ドルと、前年同期比7割増になっている。(カンボジア月刊邦字誌「プノン」編集長 木村文)
関連記事