【高論卓説】中国人旅行客の白タク利用急増 摘発が難しい理由とは…

 
混雑する関西空港の国際線到着ロビー=大阪府泉佐野市

 今年6月に沖縄県警が白タク行為の容疑で、観光客の送迎を行った中国人の男2人を道路運送法違反の容疑で逮捕した。また10月31日には関西空港などで、無許可で客を乗せる白タク行為を行ったとして、中国人の男3人が大阪府警に逮捕されている。今月12日には羽田空港でも、同様の白タク行為に対する取り締まりが実施されている。白タク行為とは、事業用旅客運送の免許を持たない白ナンバーの車両で事業運送を行うことで、違法である。中国語では白タクは「黒車(ヘイチャー)」と呼ばれており、文字通りブラックな行為だ。

 このような「白タク」が日本各地の空港や観光地で増えており、各地の警察が取り締まりに乗り出しているが、配車の手配から料金の決済までスマートフォンのアプリで完結してしまうため、はた目から違法行為と判断しにくく、摘発するのは難しいようだ。

 日本政府観光局(JNTO)によると2017年の1~11月の訪日外国人観光客の数は2616万人(前年同期比19.0%増)で、中国人は679万人(14.2%増)となっており、昨年同様全体の約4分の1を占めている。観光庁の7~9月の訪日外国人の消費動向調査によると、1人当たりの旅行中支出額は中国人が19万5808円で上位を占めている。外務省によると中国人への16年の個人観光ビザの発給件数は162万6813件(前年比44.5%増)で、数次ビザの発給数も30万6376件(96.6%増)と、個人旅行者の比率が増える傾向にある。

 個人で旅行を手配する中国人旅行者は、1人当たりの消費額が25万1159円と外国人平均の14万339円より高額だ。逆に1人当たりの宿泊料は1泊1万2928円と平均の1万2462円並みで、団体ツアーの中国人の2万1794円よりも低くなっている。リピーターの個人旅行者ほど宿泊費を抑えて、他の消費に費用を回す傾向にあるようだ。7~9月の訪日外国人旅行者の宿泊利用動向調査で、「有償での住宅宿泊」いわゆる民泊の観光客の利用率は14.9%で、中国人は14.3%であった。中国人は旅行に行く際、知人などと大勢で行動をともにすることが多く、できれば移動も宿泊も一緒に行動したいというニーズが強い。

 合法かどうかは別にして、彼らの日本旅行の際の大きな懸念となる「交通手段」と「宿泊」の問題を解決しているのが、スマホのアプリを利用したサービスでもある。ライドシェアだと「皇包車」など、民泊だと「途家」などが、訪日中国人の間で既に利用されている。前述の空港送迎の白タク行為もスマホのアプリを利用して行われている。皇包車のサイトには、荷物が十分積み込めるミニバンの送迎サービスが数多く掲載されているし、空港への送迎だけでなく観光地への周遊コースも掲載されている。一方、途家のサイトには大人数が一緒に泊まれるマンションの部屋が数多く掲載されている。宿泊料金も、一部屋いくらで表示されており分かりやすい。これらの料金は全て元建てで、スマホアプリの決済で完結するため、日本円に両替する必要もない。

 民泊に関しては、来年の6月15日から施行される「民泊法」により違法状態が一部改善される方向にあるが、ライドシェアに関してはほとんど進んでいないのが現状だ。インターネットやスマホの発達によって、これまで想定していなかったサービスが誕生し、しかも国境を越えて提供される時代になっている。「違法行為」を取り締まるのも必要だが、新たなニーズに対応できるよう知恵を絞る必要もありそうだ。

【プロフィル】森山博之

 もりやま・ひろゆき 早大卒。旭化成広報室、同社北京事務所長(2007年7月~13年3月)など経て、14年から遼寧中旭智業、旭リサーチセンター主幹研究員。59歳。大阪府出身。