【中国を読む】EV大国から次はAI大国へ 先進国より先に次世代モビリティー社会実現も

 
画像はイメージです(Getty Images)

 グローバル市場で、2016年は乗用車タイプのプラグインハイブリッド車(PHV)と電気自動車(EV)の販売台数が72.8万台となり、11年から累計188.9万台となった。中国市場は世界全体の33.5%を占め、17年には37.8%と16年に比べて4.3ポイント上昇、EVシフトにおける中国の位置付けがより重要になったといえる。

 新エネ車参入を奨励

 プリウスに代表されるハイブリッド車(HV)が日本で普及しているが、欧州や中国など海外市場は、自動車の電動化がHVではなく、PHVやEVを中心に普及していくトレンドとなる「EVシフト」が起きている。もちろん足元では、世界のHV乗用車累積販売台数(04~16年)が1152万台以上でPHVやEVの6倍以上もあり、世界でのPHVとEVのプレゼンスは依然として低い。しかし、EVシフトによってPHVとEVが高い伸び率で成長していくと10年かからずにHVを超える規模になる可能性がある。

 中国では20年に向けて新エネルギー車(NEV)向け補助金が減額され、20年に打ち切られる。補助金がなくなるとNEV市場が縮小するリスクが存在している。今後、NEVの普及拡大に向けた継続政策として、これまで製造業全体を強くする「中国製造2025」、自動車メーカーに課した「NEVクレジット規制」や「企業別平均燃費(CAFE)規制」、消費者に課した「ナンバープレート規制」に加えて、ガソリン車に環境関連の税金を課税することが検討されている。さらに、欧州や東南アジア諸国連合(ASEAN)と同様にエンジンのみを積むガソリン車の販売禁止法案をどのタイミングで実施するかの検討に入っている。

 一方、EV市場を拡大させるためには、より良いEV作りの実現が欠かせない。このため他業種からNEV市場への新規参入奨励政策が政府によって打ち出され、十数社が参入している。代表的なIT企業は蔚来(NEXT EV)や奇点汽車(Singulato)などである。

 電動化だけではない

 EVが本格的に普及するシナリオは、政策だけでは限界があることは言うまでもない。野村総研の分析によると、ユーザーがEVを受け入れる前提条件の一つは、経済合理性がガソリン車など内燃機関(ICE)を搭載した車よりも高くなければならないことだ。そしてEVの経済合理性を成立させ、ICE車よりも優位に立つために、イニシャルコストの削減だけではなく、利便性などの向上も求められている。以上のことから今後、市場で求められるEVとして3つのパターンがあると考えられている。

 1つ目は、米テスラの「モデルS」を代表とする高級EV。加速性能が抜群でデザインも斬新だが、プレミアム価格が付いている。

 2つ目は、電池価格がさらに下がりエネルギー密度が上がることで、EVの航続距離が現状の300~400キロ前後から500キロ以上に延びる車種。「EV2.0」と定義されICE車代替を目的としている。

 3つ目は、EVの利便性を自動運転やコネクテッドの技術によってさらに高めた車種。いわゆる「サービスEV」である。車は移動の手段としてだけでなく、移動中の空間やさまざまなサービスを付加価値として提供する。

 中国政府はEVシフトを実現するために、サービスEVを重点的に進めていく方針。自動車の電動化に加えて、自動化やコネクテッド化など機能の付加が必要不可欠と認識している。

 特に自動運転やコネクテッドにとって重要となる人工知能(AI)を中心に国家プロジェクトを立ち上げている。政府支援策の影響を受けて、中国の地場系AI関連企業も爆発的に増えている。国際的にはAI関連のスタートアップ企業が300社程度存在しているが、中国では既に100社もあり、全体の3分の1を占めている。この動きはグローバルな大手企業には見逃せない。既に中国のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場ベンチャー企業)との連携を模索し、アライアンスを強化している。

 AIを発達させ、自動運転やコネクテッドの技術が普及すれば、中国が先進国より先に、EV中心の次世代モビリティー社会を実現させることは不可能ではない。

【プロフィル】張鼎暉

 ちょう・ていき 東北大卒。2005年野村総合研究所入社。グローバル製造業コンサルティング部主任コンサルタント。専門は経営・R&Dなど戦略、戦略マップ策定、業務革新。38歳。中国出身。