世界株安、「官製相場」に試練 世界的な株安連鎖で 右肩上がり「慢心」指摘も
前日の米国株に続き、6日の東京市場の日経平均株価も急落した。トランプ米大統領の経済政策への期待感から世界の投資マネーが支えた上昇相場は大きく反転。世界的な株安の連鎖で、安倍政権と日銀が足並みをそろえて株価を支える「官製相場」は試練を迎えた。
5日のニューヨーク市場は、投資家の不安心理の大きさを示すとされる「恐怖指数(VIX)」が急上昇し、動揺が広がった。債券市場や外国為替市場では、相対的に安全な資産とされる国債や日本の円が買われた。
東京証券取引所第1部の売買代金の7割は外国人投資家。米株急落に伴う損失を穴埋めする売り注文が東京市場に広がり、不安心理が連鎖した。
株価急落は実体経済に悪影響を及ぼす恐れがある。景気の先行きが懸念されて国内外で消費意欲が衰えたり、高額な教育費への支出を控えたりしかねない。円高などで日本の輸出企業の収益が目減りすれば、デフレ脱却に不可欠な賃上げを目指す今春闘への悪影響は強まりそうだ。
市場の安定を担う日銀など各国の中央銀行は難局に直面する。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が5日、就任の宣誓式に臨んだ。嵐の中の船出となり、早速その手腕が試されることになった。日銀も次期総裁人事の大詰めで、市場は緊迫の度合いを増している。
最近の株価指数は世界的にほぼ一本調子ともいえる騰勢だっただけに「投資家には上昇して当たり前という『右肩上がり神話』があった」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)と、市場の慢心を指摘する声があった。
上野氏は「油断していたところ、バランスが崩れ、株安の連鎖となっている」と説明し、「このまま下げが続けば実体経済への影響が懸念される」と強調する。富裕層の消費が鈍ったり、企業の景況感が悪化したりする恐れがあるという。
東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、急落の背景には「相場の流れに追随し、動きを加速させるヘッジファンドの存在があった」と分析した。株価指数が高値を更新していた時期には流れに乗って利益を得たが、一度下げ始めると売りが膨らむ結果を招いたという。
第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは、これまで米国株を中心に企業の本来の実力と比べて買われ過ぎていたとの見方だ。「異様に割高だった。起こるべくして起こった急落だ」と話していた。(共同)
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