「阿波おどり」4億円超の累積赤字、徳島市と観光協会が対立…今年の開催は大丈夫?

 
毎年120万人以上が訪れる「阿波おどり」だが、地元の混乱で今夏の開催が危惧されている

 徳島市の夏の風物詩「阿波おどり」(8月12~15日)に4億円余りの累積赤字が発生し、運営方法などをめぐって徳島市と主催者の公益社団法人・市観光協会の対立が深刻化している。市は「観光協会に代わる新たな運営体制を作る」とし、債権者として協会の破産手続きを徳島地裁に申し立てた。一方、観光協会は「協会に責任を押しつけている」と反発し、阿波おどりの単独開催も示唆する。本番まで半年を切ったが、地元の混乱に市民やファンからは「今年の開催は大丈夫か」といった声も出ている。

4億3600万円にまで膨らんだ借入金

 毎年120万人以上が訪れる阿波おどりは、観光協会と徳島新聞社が主催。主要な業務は観光協会が担当し、毎年、金融機関からの借入金などで運営しているが、事業特別会計は赤字が続いている。

 市と金融機関は観光協会が借入金を返済できないときは、市が損失補償する契約を結んでいる。観光協会はこれを“担保”に金融機関から資金を借り入れ、年度末にいったん清算した上で翌年度にまた借り入れる形をとっており、事実上、借金を翌年度に回す形となって累積債務が膨らんでいる。

 市によると、観光協会の累積債務は平成9年度が2億2700万円、12年度が3億700万円、15年度は4億円を超えた。その後は一部を返済したため3億8千万円前後で推移したが、24年度に再び4億円を超え、28年度は4億3600万円にまで膨らんだ。

 市の損失補償の限度額は年度末に観光協会と協議して設定。借り入れ増に伴い一時は6億円に設定したが、28年4月に就任した遠藤彰良市長はこの限度額を変更し、29年度は借入額と同じ4億3600万円に減額した。市は「安易に赤字を増やさないように借入額に合わせた」と説明する。

地方自治法に基づき調査に乗り出す

 赤字解消策を探るため、市は昨年9月に観光協会と徳島新聞社の3者による協議会の設置を決め、観光協会に出席を呼びかけた。しかし、観光協会は「市長が議会で所信表明する当日朝に一方的に協議会設置を通知してきた。まずは観光協会で過去の検証、対応策を検討することにした」として、協議会に出席しなかった。

 そこで市は損失補償する団体の予算の状況を把握するため、地方自治法に基づき昨年11月21、22日に観光協会の事務所で5年間の予算収支簿などの調査を実施。調査したのは遠藤市長が委託した弁護士や公認会計士、大学教授らで作る「阿波おどり事業特別会計の累積赤字の解消策等に関する調査団」で、今年2月5日に調査報告書を遠藤市長に提出した。

 それによると、現金預金や貸付金などの資産を差し引いた阿波おどり事業特別会計の累積赤字は約4億2400万円。

 阿波おどり事業の25~28年度の収益は有料演舞場、前夜祭、会期中に行われる「選抜阿波おどり」のチケット収入が約1億8600万~約1億9600万円。広告看板や協賛金などの収入が約3400万~約4400万円などとなっていた。

 経費は約2億6600万~約2億8600万円で、主なものは演舞場の桟敷スタンド設置工事(約3500万~約3600万円)、照明・電飾の設置工事(約4400万~約4600万円)、警備費(約1900万~約2100万円)。このほか、案内看板や広告看板の製作費があった。

 しかし25~27年度の収支に関する契約書、請求書などの一部が保管されておらず、調査団は「裏付け書類の提出を受けないまま精算(支払い)を行っており、不適正な会計処理だ」と指摘した。

 一方、市による補助金は29年度は約7100万円で、内訳は阿波おどり事業のシャトルバスの運行や無料桟敷席の設営などに約2200万円。残る約4900万円は「阿波おどり会館」で行う公演の経費や観光協会の人件費に充てられていた。

 なぜ赤字が発生するのか。観光協会側の経費の使い方などを指摘する声もあるが、協会は演舞場桟敷の購入・改修・設置の費用のほか、雨で中止になったときのチケットの払戻金、シャトルバスの運行費、看板製作費、前夜祭の会場費などが要因としている。

補助金打ち切り、指定管理も変更

 観光協会の事業は「公益目的事業」と「収益事業」に区分され、公益目的は阿波おどり事業や観光キャンペーン、姉妹都市交流などの観光振興事業。収益事業は「阿波おどり会館」と「眉山ロープウエイ」の管理運営事業、グッズ販売やレンタサイクルなどとなっている。

 収益の柱となる阿波おどり会館と眉山ロープウエイは市から年間8300万円の指定管理料が入っていたが、30年4月から5年間は、これまで担当してきた観光協会ではなく、徳島新聞社とその関連会社で構成する共同事業体が指定管理者に選ばれた。

 調査団は観光協会の組織・事業の財政的基盤といえる指定管理料が入らず、市からの補助金の打ち切りも予想され、3者による協力体制が維持できるかも懸念があるとして、「観光協会が累積赤字を解消しつつ阿波おどり事業を継続するのは困難」と結論付けた。

市と観光協会が別々に開催?

 調査結果を踏まえ、市は観光協会への30年度の補助金打ち切りを決定。さらに3月1日付で、観光協会の破産手続きを申し立てた。4億円余りの借入金を返済できなければ市が税金で負担することになるため、協会の保有財産が減る前に清算手続きを急ぐ方針だ。

 遠藤市長は「市に(協会の損失を)補償する義務があるのは承知している。税金をできるだけ使わなくて済むような方法を考えたい。(阿波おどりの)新しい運営主体を市がしっかり責任を持って作っていく」と述べる。

 一方、観光協会は市のこうした対応に反発。「今後、収支改善の余地はあり、破産させる必要はない」(協会関係者)として、清算手続きに入らず、協会を存続させる方針を決めた。

 近藤宏章会長は「市とはお互い信頼関係でやってきた。市の要望も聞き、それで赤字が出たこともある。市、徳島新聞社にも責任があり、観光協会だけに押しつけるのではなく、(損失は)3者がそれぞれ負担すべきだ」と説明。阿波おどりについては、「これまでのノウハウがあり、今年も継続してやっていく」といい、協会単独での開催も示唆する。

 累積赤字の解消、責任問題などをめぐって対立する徳島市と観光協会。今夏の阿波おどりは例年通りの規模で実施できるのか。実施できたとしてどこが運営し、どんな内容になるのか、地元での動向が注目される。