財務省事務次官ポスト 迷走3カ月も「牙城」死守
異例の空席が約3カ月続いた財務省の事務次官ポストは結局、「大本命」の岡本薫明主計局長が昇格する形で決着した。この間、次官候補には浅川雅嗣財務官、星野次彦(つぐひこ)主税局長の名前が浮上し、報道も迷走。だが、森友学園問題への世論の批判がピークを越えたという安倍晋三政権の判断も追い風に、財務省主計局は最終的に、同省トップである次官ポストの“牙城”を守り抜くことに成功した。
「岡本氏は組織運営の中核を担ってきた。財務省の再生にもふさわしい」。麻生太郎財務相は27日の記者会見でこう説明した。
財務省の人事慣行では、主計局長の次官への昇格が通例で、岡本氏の次官就任は既定路線だった。ネックは昨年2月、財務省で森友学園をめぐる決裁文書の改竄が始まったとき、岡本氏が国会対応の責任者である官房長だったことだ。
政府内ではもともと「改竄は理財局という一部局が手がけたことで、官房長は把握できない。次官就任見送りはかわいそうだ」(幹部)との声が強かった。
だが、森友問題への世論の反発に対する懸念も根強く、「岡本氏を次官にするのは難しい」との見方が支配的になる。急遽(きゅうきょ)、浮上したのは森友問題に無関係な2人だった。
一人は浅川氏で、麻生氏が首相時代に秘書官を務めた最側近だ。もう一人は星野氏。過去には主税局長から次官に就いた例もある。だが、過去、「次官級の上がりポスト」の財務官から次官になった例はなく、浅川氏は“横紙破り”の人事を固辞。星野氏は「他省庁との調整能力に不安がある」(経済官庁幹部)と手腕を疑問視する声が強く、候補から消えた。
この結果、岡本氏が再び有力視されるようになった。6月10日に与党が推す候補が新潟県知事選で勝利すると、政権は森友問題への厳しい見方が収まりつつあると判断。「岡本氏にはセクハラなどの問題が全く見当たらない」(政府幹部)ことも大きかった。
岡本氏の後任の太田充氏も主計局畑のエースで、次の次官含みとされる。次官人事の「レール」を守り抜いた財務省。次は信頼回復や財政再建にどこまで成果を上げられるか試されることになる。
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