【視点】災害時、凶器になりうる「非構造部材」 後回しにした対策、早急な実施を

 
塀が倒壊した高槻市立寿栄小学校=18日午前10時50分、大阪府高槻市(沢野貴信撮影)

 大阪北部地震(6月18日)のブロック塀倒壊事故が示すように、被害は至る所で起きる。建物の耐震化の基本は柱やはりなどがある本体だが、それだけではない。本体に付属する「非構造部材」だ。7月の西日本豪雨など災害時に避難所となる学校や公共施設にも必ずある。にもかかわらず、対策は「本体優先」で後回しにされてきた。(産経新聞編集局編集委員・工藤均)

 非構造部材は柱などの主体構造物と違い、耐震設計に際して耐震要素から除外されているACパネルなどの外壁、天井、建具、間仕切り壁、照明、窓ガラス、配管、屋外に設置された掲示板などがある。

 2011年3月の東日本大震災では、福島県いわき市で複数の照明が、宮城県内の商業施設では天井や壁が落下し、それぞれ犠牲者が出た。東京の九段会館では、天井が崩れて2人が死亡した。天井以外でも頭上に落下すれば、“凶器”となる。数が多い分、被害の頻度は本体の比ではない。

 工学院大学総合研究所・都市減災研究センター長の久田嘉章教授は「建築基準法は、死者を出さないための対策が最優先で、非構造部材は壊れやすいのにほぼ規制がなかった。ようやく注目されてきたが、国の対策は遅い」。国立研究開発法人建築研究所の伊藤弘客員研究員も「法令上の対応が進んでいない。今ある建物は、骨組み以外だとよくわからないのでは」と話す。

 国土交通省によると、東日本大震災を契機に14年4月、建築基準法を改正。高さ6メートル超、面積200平方メートル超などのつり天井を「特定天井」と定義し、脱落・落下対策の強化が義務づけられた。しかし、報告対象は改正以降に建てられた建物。既存の施設は対象外だ。「チェックはしている。必要ならば、改修を指導する」と井上昌士・同省建築物防災対策室課長補佐。ただ、報告は長ければ3年に1度という。

 天井以外は、専門の建築主事がいる451(4月1日現在)の自治体を「特定行政庁」とし、所有者に報告を求めている。間隔は半年~3年。修理には多額の費用がかかる。負担するのは所有者。行政側も強くは出にくい。だが、久田教授は「それでいいのか、が問われている」と指摘する。

 災害時の指定避難所となる学校施設の対策も遅れている。文部科学省の調査(17年度)によると、公立小中学校の施設本体(体育館など)の98.8%で耐震化を完了した。だが、非構造部材の場合、東日本では(1)天井材(1636校)(2)照明器具(410校)(3)外壁(968校)-の被害が出た(11年7月の同省検討会緊急提言)。熊本地震(16年4月)でも天井材の落下などが相次いだ。ともに、避難所として使用できない学校が発生した。

 文科省では体育館のつり天井の落下防止対策を優先的に進め、97.1%で完了した(17年4月1日現在)。しかし、他の非構造部材は、「数が多く、対策の基準がはっきりしない。本体の老朽化対策の中で、最新の部材を使用するなどして対応する」(木村哲治・防災推進室室長補佐)状況だ。東日本後、同省では学校側に非構造部材の点検を周知した。71.1%が実施したが、奈良、宮崎、鳥取の各県は20%台。ばらつきがある(16年現在)。

 人が集まる駅舎もある。大阪北部地震では、阪急茨木市駅(大阪府茨木市)のホームの天井に設置された看板が落下。東日本の際は、JR仙台駅の新幹線ホームの天井板が300メートルにわたって落下した。

 鉄道事業者は国土交通省の省令などに基づいて点検しており、阪急電鉄広報部によると、看板が3年に1回、天井は年1回の外観目視、広告は3年周期だ。

 JR東日本では、2年に1回行う検査の際に非構造部材も行い、さびや腐食、ビスの緩みなどを目視、触診などで実施しているという。天井以外は国への報告義務はない。検査記録が「国交省の保安監査時に確認を受けている」(広報部)のもどうか。国は事業者が作成した記録をチェックする受け身の立場。対応は十分といえない。

 非構造部材は、建物に必ず存在する。点検には所有者の高い意識が、行政には本体優先、天井優先、所有者任せという固定概念に縛られず、報告制度の見直しなど一層の強化が求められている。