イスラエル総選挙で駆け引き激化 「大連立」でも思惑交錯
【カイロ=佐藤貴生】イスラエル国会の再選挙は開票の結果、左右両派とも過半数に届かない見通しとなった。今後の連立協議では与野党の激しい多数派工作が予想される。野党側では、与党「リクード」を率いて通算13年以上も首相を務めるネタニヤフ氏の退陣を求める声が強く、イランやパレスチナなどに対する外交政策を占う上でも協議の行方が注目される。
「社会を取り戻す旅を今晩から始める」。4月の総選挙に続き、野党側最大勢力となった中道政党連合「青と白」のガンツ元軍参謀総長は18日未明、こう訴えた。ネタニヤフ氏の首相在任中、パレスチナ問題などで世論の二極化が進んだことを批判した形だ。
開票率9割以上の時点で、ネタニヤフ氏ら右派・宗教勢力が中道・左派勢力を僅差でリードしているが、検察当局が10月にも汚職疑惑で事情聴取を始めるといわれる同氏への風当たりは強い。他党議員を切り崩して過半数に達するのは困難との見方もある。
一方のガンツ氏は左右両派の大連立による「国民団結政権」の樹立を目指す考えだ。地元紙記者によると、ガンツ氏は「汚職の疑惑が晴れない限り、ネタニヤフ氏と政権を組むことはない」などと述べ、リクード内部で同氏の首相続投阻止の機運が高まることに期待を寄せているという。
リーベルマン前国防相が率いる極右「わが家イスラエル」も協議を左右しそうだ。ユダヤ教の戒律を厳格に守る「超正統派」に対する徴兵免除など優遇政策の撤廃を求め、世俗派ユダヤ人の支持を拡大。議席をほぼ倍増する勢いだ。
リーベルマン氏は4月の総選挙後、超正統派との連立政権入りを拒否し、ネタニヤフ氏主導の連立協議を頓挫させた。半面、ネタニヤフ氏を上回る対パレスチナ強硬派として知られ、野党側のアラブ系政党との共闘も否定している。
連立が成立するとしても、どう決着するかは予想しがたいのが実情だ。リブリン大統領は議席を得た各党に意向を確認し、連立が組める可能性が最も高い政党の党首に協議を委ねる。期間は最長で42日間。各党の思惑は複雑に入り乱れており、難航も予想される。
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