年金運用、17兆円前後の赤字 1~3月期、過去最大 世界的株安影響

 
大幅続伸した日経平均株価の終値を示すボード=6日午後、東京都中央区

 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の1~3月期の運用は17兆円前後の赤字になるとみられることが6日までに、民間エコノミストの試算で分かった。運用資産の半分を国内外の株式に投資しており、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界的な株安が響いた。四半期ベースで過去最大の赤字幅とみられ、2019年度全体でも8兆円前後の赤字になる見込みだ。

 世界経済の減速懸念が拡大する中、株式比率の高い運用のリスクが顕在化した形。ただGPIFは長期的な運用をしており、短期的に運用が赤字になっても直ちに年金の支給に影響は出ない。四半期ベースで過去最大の赤字幅は、米中貿易摩擦などが影響した18年10~12月期の14兆8039億円。

 民間シンクタンクであるニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストが、昨年末時点の運用資産額(約169兆円)を基に3月末の各種データから試算した。井出氏は「景気後退と企業業績の悪化が確実となり、株価が大きく値下がりした。だが、ワクチンや薬の開発が近いとの情報が世の中に伝われば株価は上がるだろう」と話した。

 日本の年金制度は原則として現役世代が納める保険料で高齢者の年金を支給している。保険料のうち支払いに充てられなかった余剰分を積み立て、GPIFが運用。少子高齢化がさらに進み、保険料を払う現役世代が将来減っていく際に計画的に取り崩して支給に充てる。

 GPIFは14年に株式比率を大幅に上げたが、リスクを懸念する声も根強い。GPIFは「運用は長期的に判断する必要がある」と説明している。GPIFが1~3月期と19年度全体の運用結果を発表するのは7月の予定。

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【用語解説】年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)

 厚生年金や国民年金の保険料収入の余った分を積立金として管理し、市場で運用する。厚生労働省が所管し、2006年に設立。昨年12月末時点の運用資産額は約169兆円で、前身の年金資金運用基金時代を含め、市場運用を始めた01年度以降で累積収益額は約75兆円。少子高齢化の影響で保険料を払う現役世代が減少するのに備え、長期的な運用で将来の年金給付を確保している。17年10月、理事長への権限集中を避けるため、資産構成割合などの重要事項を決めたり執行部の業務を監督したりする経営委員会が設置された。