今年に入ってからの中国経済は、成長率の継続的下落と同時進行的にインフレ率が上昇しつつある、という現象が起きている。
「成長率が低下しながらのインフレ」は、経済学的に「スタグフレーション」と呼ぶが、どこの国の経済にとっても、それは大変深刻な事態である。成長率の低下は当然収入水準の下落や失業の拡大を意味するから、収入が減って失業が拡大している中で「インフレ=物価の上昇」となれば、一般庶民の生活が大いにおびやかされる。
特に中国の場合、ギリギリの線で生活している2億人の失業者や、分厚い貧困層が存在している状況下での本格的なインフレの到来=物価の大幅上昇は、社会的大混乱の発生を招きかねない。インフレの亢進を食い止めるために、中国政府は現在の金融緩和から金融の引き締め策に転じざるを得ないが、彼らはいまだに、政策の転換を断行する決心がついていない。その理由はどこにあるのか。
去年の09年から、中国政府が史上最大の金融緩和政策を実行して未曾有の流動性過剰を生じさせた結果、莫大(ばくだい)な投機資金が不動産市場に流れ込み、史上最大の不動産バブルを膨らませた。今年に入ると、それをどう処理するのかが、中国政府にとって頭の痛い難題となっている。
その際、もし政府がインフレ退治のために思い切った金融引き締め政策に転じてしまった場合、副作用として、金融緩和によって支えられている不動産バブルの崩壊は避けられない。そしてバブルが弾けてしまえば、不良債権の大量発生・経済の冷え込み・成長率のさらなる低下・失業の拡大などの連鎖反応がやってくることは火を見るよりも明らかだ。中国政府にとって、それはまた、社会と政権の安定を根底からひっくり返す危機の到来を意味する以外の何ものでもない。