白川方明日銀総裁自身、金融政策による脱デフレ効果について「限界がある」と繰り返してきた。米欧のような大胆な通貨発行は、悪性インフレのような弊害を招くと警戒する。
日銀は10年10月に「包括的な金融緩和政策」を打ち出したが、中央銀行資金をふんだんに供給する米欧タイプの「量的緩和」には背を向けている。日銀のバランスシート「資産」の部に「資産買入等基金」という特別枠を設け、日銀の貸し付けの担保と、買い入れる国債などの金融資産を選定して、「基金」枠の中に分類するが、資産全体総額の伸びや日銀資金供給残高の増加を最小限に抑えている。いわば、「擬装」緩和である。
ドルやユーロに比べた円の供給量は極端に小さいままだ。このアンバランスが円相場に反映し、リーマン以来、この5月中旬で円は対ユーロで46%、対ドルで33%円高になっている。超円高はデフレを加速し、株価を押し下げ、半導体の「エルピーダメモリ」の破綻(はたん)や家電各社の苦境をもたらした。
消費増税とセット
日銀法改正は真っ先に「みんなの党」が言い出したが、国会での推進派議員は多数を占めるには至ってはいない。日銀の金融政策は一般有権者にはなじみが薄い。議員多数は日銀法改正への関心が薄いからだ。
だが、ここに来て新たな動因が生まれた。消費増税法案である。野田佳彦首相ら民主党執行部は自民党案を丸のみしてでも法案を成立させたい。自民党のほうは消費税率10%案を最初に言い出した手前、増税そのものには反対ではないが、野田案とははっきりと区別できる独自案を提案しないと、有権者の評判の悪い野田案と「談合」したと受け取られ、低迷する世論の支持率を引き上げられない。