安倍晋三首相【拡大】
だが、あるアナリストは物価目標2%の達成は「経営者が従業員に大盤振る舞いするくらいの賃金上昇が必要」と話す。今も日銀内では2%の達成には懐疑的な見方が根強い。
少子高齢化に伴う需要不足と競争力低下に苦しむ日本企業は、従業員の賃金を抑えることで収益を確保してきた。今年の春闘でも経団連は「足元は凍ったまま」だとして、賃上げに否定的だ。
就職難や終身雇用制度の崩壊に直面する国民にとって、賃金が持続的に上がることはにわかに信じがたく、いきなり財布のひもを緩めることは難しい。
最悪の事態は、収入が増えず、物価だけが上がることだ。モスクワの“高級”歯ブラシを使いながら、将来、物価が上がると家計はどうなるのかと一抹の不安を感じた。
安倍首相には、社会保障と税の一体改革や規制緩和など、デフレ脱却に不可欠な構造改革を成し遂げてほしいと切に願う。(小川真由美)