日本はこれまで2カ国・地域間で13の経済連携協定(EPA)などを締結してきたが、交渉では経済産業省が自動車などで相手国に関税撤廃を求める一方、農林水産省が農水産品の関税維持を主張。「一定の譲歩をした上で、相手国から妥協を引き出すバランス感覚が欠けていた」(浦田秀次郎・早大大学院教授)
政府対策本部は省庁の利害を超え、総合的に国益を判断する構え。実際、交渉では日本が乗用車でオーストラリア(関税率5%)や、カナダ(6.1%)に関税撤廃を求める一方、日本は小麦(252%)など農産品の関税を削減するよう求められる公算が大きく、貿易自由化の恩恵を享受するためには一定の代償は避けられない。
また、TPP交渉のテーマは関税撤廃など21分野に及び、参加国の利害も錯綜(さくそう)しており、他国との連携も不可欠だ。例えば、自民党が関税死守を目指す農産品の重要5品目のうち砂糖は、米国が関税撤廃に慎重。「聖域」確保に向け、どの国を味方とするかという難しい判断も迫られる。
通商交渉は「参加国同士が市場開放という痛みを分け合った上で、どれだけ自国のメリットを積み上げていけるかが勝負」(外務省幹部)。TPPで最大限の国益を確保するために、政府対策本部が司令塔として指導力を発揮できるかどうかがカギとなる。