火力発電所のLNG設備。火力発電向け燃料輸入の増加で貿易収支の赤字基調は続いている=千葉県富津市【拡大】
ただ、輸出の低迷に加え、停止中の原子力発電を補うための火力発電向け燃料輸入の増加で貿易収支の赤字基調からは抜け出せていない。この影響で、2月の経常収支は前年同月比でみると47%減と、ほぼ半減している。円安効果を追い風に、輸出を増やし、貿易収支を改善させられるかが、経常収支を抜本的に上向かせるための鍵となる構図は変わっていない。
一方、円安に伴う輸入価格の上昇は企業の景況感にマイナスの影響も及ぼし始めた。内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査は、街角の景気実感を示す現状判断指数が株高を背景に前月比4.1ポイント上昇の57.3と過去最高に並ぶ一方、先行き判断指数は0.2ポイント低下の57.5となった。先行きが5カ月ぶりに悪化したのは、輸入する原材料価格が上がっているためで、企業部門の景気実感は前月比で悪化に転じた。
企業からは「製造コストの増加要因を容易に価格転嫁できない」(近畿の繊維工業)、「燃料や材料の輸入価格が上がり、利益の出ない中小企業の工場は休業しているところもある」(近畿の輸送業)といった声が聞かれるなど、行き過ぎた円安に対する企業の警戒感も強まってきた。