□スパイダー・グループ 代表・森辺一樹
大企業の多くはここ10年で主戦場を海外へ完全にシフトした。ある経済紙によれば、上場企業420社の地域別営業利益を、2000年と10年で比較すると、国内が30%減少し、海外が85%拡大しているという。
最近は、中小企業においても海外市場獲得が至上命題の時代へと大きく変貌を遂げている。この外需獲得の大きな波は、日本が過去に経験したことがない新しい時代であり、国内市場が低迷していく限り、海外へ販路を求める流れは続くだろう。そして今、多くの中小企業が限られた経営資源の中で成し得る海外市場獲得の成功モデルを模索している。
さまざまな規模の企業の海外販路開拓に関わってきた立場から、私は中小企業には“出ない戦略”を提唱している。この戦略とは、海外市場をあきらめるのではなく、“法人なき海外進出”を指す。法人を設立せずに、海外市場の獲得を目指すモデルである。
もちろん、中小のサービス業者や小売業者は海外企業の買収や海外企業とのライセンス契約ができる資金力やブランド力がないので、現地に進出して成功する道は険しい。
しかし、プロダクト・ベースのいわゆるモノを売る中小企業が現地法人を設立すれば、それはリスク以外のなにものでもない。まず初期コストが発生し、その後も利益が出ていなくとも法人を抱える以上は止めることのできない固定費が継続的に発生する。中小企業にとって最難関と言っても過言ではない優秀な人材の確保や海外ならではのさまざまなリスクへの対応力など、克服しなければならない課題は多い。これは、BtoC(対消費者取引)、BtoB(企業間取引)に関わらず同じである。
このような苦労をしてまで現法を設立しても、利益を生むために最も重要となる販売網がなければ、販売網を構築するまでの期間、継続して固定費が垂れ流しになる。これが中小企業にとっては致命傷となるのだ。
経営資源が豊富で、体力のある大企業は販売網をつくるために、ある程度は中長期的な投資を加味した早期の進出が可能だが、中小企業はそうはいかない。したがって、現法を設立してから損益分岐点に到達するまでの期間を可能な限り短縮できる戦略をとるべきなのである。
中小企業の海外市場獲得は、必ず販売網の構築が先で、次にその販売網をマネジメントする目的で現法設立とすべきである。販売網の構築が最優先であり、それは現法なくしても達成し得るからだ。
日本の中小企業には、海外市場で十分に通用する企業がまだまだある。しかし、成功モデルへの理解が浅いために無駄な失敗事例や市場獲得を断念せざるを得ないケースが多い。中小企業が海外市場で成功することは、日本の地域活性化につながり、ひいては日本経済の復興に大きく寄与する。
次回は、販売網の構築方法について解説する。(隔週掲載)
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【執筆者紹介】
森辺一樹(もりべ かずき)
2002年に新興国市場の調査会社ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ(SDI)を創業。現会長。13年には新たにグローバル・マーケティング講座の運営会社としてスパイダー・グループを創業し代表に就任。1000社を超える企業に対して新興国展開支援の実績を持つ。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。
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森辺氏のツイッターは @kazukimoribe