日銀は22日の金融政策決定会合で、国内景気の現状判断を「持ち直しつつある」とし、前回の「下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている」から引き上げた。判断の上方修正は5カ月連続。4月に導入した大規模な金融緩和策の継続も全員一致で決めた。黒田東彦総裁は会合後の会見で、最近の長期金利の上昇について「実体経済に大きな影響を及ぼすとはみていない」としながらも、「変動率の過度な拡大は回避しなければならない」と述べ、弾力的な国債の買い入れで金利の安定に努める考えを示した。
景気判断の修正は、輸出が下げ止まり、生産に持ち直しの動きが出ているほか、消費者心理の改善で個人消費も底堅さを増していることなどを踏まえた。
日本経済の先行きは、金融緩和や経済対策の効果に加え、海外経済の回復で「緩やかな回復経路に復していく」とし、判断を据え置いた。
1~3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、年率に換算して3.5%と高い伸びになった。ただデフレはまだ続いており、2%の物価上昇目標の実現に向け、市中に供給するお金の量を2年間で2倍に増やす「異次元緩和」は続ける。
一方、緩和策により全体的な金利の低下を促し、投資や消費を活発化させるとの日銀の思惑通りに進んでいない。長期金利の指標となる新発10年債の利回りは、緩和策の導入翌日の4月5日に0.315%と過去最低を更新したが、その後は乱高下し、5月15日には一時0.920%まで上昇。長期金利の上昇を受け、住宅ローン金利や銀行の企業向け貸出金利も上がっている。
会見で黒田総裁は「かつてより(長期金利の)変動率がやや高く、市場が落ち着きどころを探している面はあり、十分注視する必要がある」と述べ、緩和策の影響で債券市場が不安定化していることを認めた。
その上で「景気回復や物価上昇の期待が高まれば金利上昇はありうる」と指摘する一方、日銀が緩和策で国債を大量に購入しているため「直ちに長期金利が上がるとは考えていない」との見方を示した。
黒田総裁は、緩和策の効果を高めるために「必要に応じて(国債の)買い入れ頻度やペース、買い入れ対象を調整するなど弾力的な運営をしていくことで、長期金利が跳ねるのを防止できる」と述べ、金利の安定化に自信をみせた。