日銀は11日に開いた金融政策決定会合で、市場が注目していた長期金利の急上昇を抑えるための対策を見送った。日銀が世の中に供給するお金の量を示すマネタリーベース(資金供給量)を2年間で倍増させることを柱とした現行の金融緩和策は、全会一致で維持を決めた。一方、国内景気の現状判断については「持ち直している」とし、6カ月連続で上方修正した。
日銀が4月に緩和策を導入した後、長期金利の動きは不安定となり、指標となる新発10年債の利回りは5月23日に一時1%まで上昇。今回の決定会合では、長期金利の急上昇を抑えるために、日銀が年0・1%の低金利で金融機関に資金を貸し出す期間を現行の最長1年から2年程度に延長する案が浮上していた。
貸し出し期間を延長すれば、資金繰りに余裕の生じた金融機関が国債を購入しやすくなり、金利を安定化する効果が期待できると見る向きがあった。だが、足元では長期金利がやや落ち着いていることなどから今回は見送ったとみられる。
会合では、平均株価が大幅に下落した5月下旬以降の日本経済の動向を点検。円安を背景に輸出が持ち直しつつあるうえ、個人消費も底堅く推移していると評価。株価下落の影響は限定的として、景気判断を前月の「持ち直しつつある」から「持ち直している」に上方修正した。
午後に黒田東彦総裁が日銀本店で記者会見し、決定の背景などを説明する。5月下旬以降、荒い値動きが続く金融市場の安定化に向け、どのようなメッセージを発するのか注目される。