タイ政府が実施しているコメ農家に対する所得補償制度が同国経済に多大な損失をもたらしている。現地紙バンコク・ポストによると、2011~12年収穫年度の損失額は2000億バーツ(約6220億円)以上となり、財務省による当初試算の損失額700億~1000億バーツを大きく上回ったもようだ。
昨年度、タイ政府が同制度によって買い取ったコメは2200万トン、総額3200億バーツだった。コメ市場の需給緩和で価格が伸びず、政府による売却が思惑通りに進まなかったために損失が拡大した。同制度のもとでタイ政府が買い取るコメの価格は平均1トン当たり800ドル(約7万7200円)。これに対して、市価は現在も同560ドル程度となっており、同国政府には苦しい状況が続いている。政府が10~12年にかけての2収穫年度に同制度で投じた金額は5870億バーツにのぼるが、売却総額は2200億バーツにとどまった。
国連食糧農業機関(FAO)は12~13年収穫年度終了後にはタイ国内のコメ在庫量が1630万トンと過去最大規模までふくれあがると予想。世界のコメ生産量は昨年並みの見込みであることから、タイの在庫過多がさらなる価格低迷を招く可能性があると指摘している。