ただ、自動車や農業など日米間の大きな懸案分野を除けば、産業界や議会の対日批判は限られ、米日経済協議会のレイク会長は「TPPで為替問題を取り上げるのは交渉を複雑化させるだけだ」と指摘する。
TPP交渉で難航する分野で、米国が日本との共闘を期待する分野も少なくない。たとえば知的財産で、米製薬業界は知財保護の水準が高い日本の合流を歓迎する。外資規制の撤廃や国有企業への優遇見直しでも日米はともに積極派だ。
政治的事情も見逃せない。自民党の参院選勝利で政権が安定した日本と違い、米国は来年秋に中間選挙を控える。日米通商筋は「年内妥結は無理でも、来年の早い段階で交渉をまとめたいのがオバマ政権と民主党の本音」との見解を示す。
日本や韓国との自由貿易協定(FTA)交渉を抱え、16カ国で構成する東アジア包括的経済連携(RCEP)の盟主をもくろむ中国への警戒感も米国には強い。TPPや始動した欧州連合(EU)とのFTA交渉で、日米欧の3極による国際的な通商ルールづくりを急ぎたいところだ。(ワシントン 柿内公輔)