来年4月の消費税率引き上げを前に、引き上げ分の価格転嫁を目指す「転嫁カルテル」の動きが広がっている。医療向けガスなどを販売する「日本産業・医療ガス協会」(JIMGA)が今月上旬に公正取引委員会に届け出たほか、飲料や食品など複数の業界団体が実施の方向で検討している。政府も価格転嫁の専門調査官を新たに配置し、スムーズな転嫁を支援する構えだ。
「経営環境が厳しい中、(消費税が)転嫁できるかは死活問題だ」。8日に転嫁カルテルの届け出を発表したJIMGAの豊田昌洋会長は消費税増税について危機感をこう強調する。
中小の豆腐製造業者で作る「全国豆腐連合会」(東京都台東区)も「豆腐の適正価格を守る」(橋本一美業務執行理事)として転嫁カルテルを実施する方向。全国清涼飲料工業会(東京都中央区)は30日にも、自動販売機での値上げは10円単位で行い、価格据え置きの商品と合わせて3%分の値上げにすることなどを申し合わせる。このほか「日本家庭紙工業会」(同)が届け出を検討中だ。
各業界が転嫁カルテルに向けてかじを切るのは、中小メーカーにとって価格転嫁は難しいためだ。日本商工会議所の調査によると、平成9年の消費税増税の際、売上高5千万円以下の小規模・零細事業者の半数以上が、増税分を「転嫁できなかった」と回答した。転嫁カルテルは、「小売りなどの大手取引先にも、こちらの主張を伝えるきっかけになる」(食品業界関係者)と期待されている。
政府も価格転嫁の動きを後押しする。経済産業省は今月2日、「消費税転嫁対策室」を設置。約500人の「転嫁対策調査官(転嫁Gメン)」を中小企業庁や全国の経済産業局に配置した。
調査官は消費税分の不払いや支払い時に対価を差し引くなどの行為が行われていないか細かくチェック。被害額が大きいなど悪質な事例が判明した場合には、公取委が是正を勧告、企業名を公表する。