従来のスポーツ施策は学校体育と切り離せず、都道府県の教育委員会が所管していた。しかし、近年はスポーツを観光資源として地域振興につなげる「スポーツツーリズム」の理念が広まり、自治体は経済や産業の観点からスポーツ施策に臨む必要性に迫られている。
「スポーツ資源を生かした観光活性化や経済振興は、教育委員会から出てこない発想」と日本スポーツマネジメント学会会長の原田宗彦・早大教授。原田氏はSSC副会長も兼ねており、昨年5月には、カナダで開かれた国際競技団体の会議「スポーツアコード」に参加し、ツールドフランスを主催するASO社(フランス)とSSCの橋渡しをした。
同様の動きは各地にも広がっている。関西経済界の提唱で12年4月に発足した「スポーツコミッション関西」は、20年東京五輪の翌年に中高年の国際総合競技大会「ワールドマスターズ」の誘致を目指す。大会規模は3万人、140億円の経済効果が見込まれる巨大イベントだ。
原田氏は「埼玉のように地域特性を生かせば、五輪のような一生に一度のイベントだけでなく、1年に一度のイベントが開ける。今後、地方が自らイベントを取りにいく動きが広がるはず」と指摘する。
■スポーツコミッション 米国インディアナポリスで1979年、スポーツを通じた市の活性化のために世界で初めて設立された。国際大会や全米大会の誘致に力を入れ、同市は工業だけでなくスポーツの街としても発展。現在では全米で約500の組織があるといわれる。日本では2011年10月、埼玉で最初の組織が発足。今年に入り、佐賀県や新潟・十日町市などでも相次いで設立された。