インドネシアのパソコン販売に異変が生じ始めている。IT専門調査会社IDCによると、デスクトップ、ノートブック型パソコンの今年第2四半期(4~6月期)の販売台数(出荷ベース)は前年同期比では3.8%増だったが、前期比では6.2%の減少となった。最も販売台数が多い個人向けノートブックは前期の90万台から8.9%減の82万台まで減少した。
◆4年で保有者3倍に
輸入品が大半を占めるため、通貨ルピアが対ドルで下落した今年5月以降、販売価格が上昇。IDCインドネシアのアナリストは「第2四半期の最初は良かったが、ルピア下落後、小売業者は、法人向けと個人向けの双方で需要が落ちてきたと感じている」と分析した。
通貨下落のうえ、インフレ率が上昇していることもあり、小売業者は販売価格を引き上げた。これが一層の需要減を招くという悪循環に陥っているという。ブランド別では、台湾のエイスースが初のシェアトップとなり、エイサー、レノボ、東芝、HP(ヒューレッド・パッカード)が続いた。
パソコンからタブレット端末への移行は世界的に進んでいる。インドネシアでも都市部を中心にタブレットの販売が急速に伸びており、デスクトップ、ノートブックの販売を圧迫している。
今年のタブレットの販売予測は360万台に達し、普及が始まってから4年足らずで、デスクトップ、ノートブックを合わせた335万台を初めて上回る見通し。ITコンサルティングのeマーケティアは、インドネシアにおけるタブレットの保有者は今年中に600万人に達し、4年後の2017年には3倍近い1620万人に達すると予測している。
IDCによると、インドネシアのタブレット保有者の21%が、主に子供用に使用。アジア太平洋地域(日本を除く)の平均のほぼ2倍に達するという。
◆高価格帯でも人気
IDCの担当者は地元メディアに対し「従来のパソコンより、製品の革新性が高く、価格もより安価なタブレットの需要の伸びが大きい」と指摘。地場小売り大手エラジャヤ・スワスンバダのジャトミコ・ワルドヨ広報担当は、サムスンのタブレットを例に挙げ「500万~700万ルピア(約4万3000~6万円)と高価格帯だが需要が落ちることはない」として、価格だけが販売急増の要因ではないと指摘した。
ソニーの現地法人もこのほど、タブレットのようにして使用できるノートパソコン「VAIOフィット」やタブレット「VAIOタップ」を発表し、タブレットの販売に力を入れていく方針を示した。
メールの送受信やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などパソコンの機能の多くがスマートフォン(高機能携帯電話)より大画面で利用でき、立ち上げの面倒もなく手軽に持ち運べる点がタブレットの人気の秘密。
今後は、画面のサイズが5~7インチでタブレットとスマートフォンの中間に位置する「ファブレット」の需要も伸びてくることが予想され、パソコン販売は一層苦境に立たされそうだ。(インドネシア邦字紙「じゃかるた新聞」編集長 上野太郎)