【ワシントン=柿内公輔】米連邦準備制度理事会(FRB)が量的金融緩和の「出口」をめぐり揺れている。堅調な経済指標を受けて早期の緩和縮小観測が再燃する一方、財政危機の再来を警戒し緩和継続を求める声も根強い。両陣営の舌戦は激しく、FRBは難しい判断を迫られる。
FRBのバーナンキ議長は「景気回復が続けば量的緩和を年内に縮小する」としていたが、10月の政府機関閉鎖やデフォルト(債務不履行)騒ぎで緩和縮小は遠のいたとみられた。
ところが、財政危機がひとまず収束し、10月の雇用統計や7~9月期実質国内総生産(GDP)が市場予想を上回ると、早期縮小論が勢いを盛り返した。株価も好調で、ダウ工業株30種平均は今月21日に最高値を更新し、終値で初めて1万6000ドルの大台を突破した。
前日の20日に公表された10月29、30日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録でも、景気や労働市場が改善を続けるとのFRBの見通しにほぼ変化はない。同FOMCでは、投票権のある参加者の数人が「今後数回の会合で(米国債などの)資産購入のペースを縮小できる」と主張したことも判明した。
FRBで金融引き締めに積極的な「タカ派」として知られるフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁は「労働市場は相当改善した。緩和縮小に踏み切るべきだ」と強調。セントルイス連銀のブラード総裁も「統計次第だが12月のFOMCで縮小が決まる可能性も出てきた」とみる。
一方、次期FRB議長に指名されたイエレン副議長ら「ハト派」は、金融引き締めに慎重だ。“デビュー戦”となった今月14日の議会公聴会でイエレン氏は「経済の力強い回復」が量的緩和の縮小の前提とくぎを刺した。1月で退任するバーナンキ議長も「イエレン氏の意見に賛成だ」と援護射撃し、シカゴ連銀のエバンス総裁も「3月まで待つべき」と訴える。
量的緩和の行方を占う上で注目されるのは、今月27日に発表される個人消費統計や28日の感謝祭から本格化する年末商戦だ。12月初旬に発表される雇用統計も好内容なら「年内の緩和縮小もありえる」(米エコノミスト)との声も高まる。
ただ、再燃しそうな財政危機が「最大の逆風」(FOMC議事録)で、年明けにかけて大詰めを迎える議会の財政交渉もFRBの判断に影響しそうだ。