05年の小泉純一郎内閣のいわゆる「郵政選挙」では、自民党は2588万票を獲得、38.2%の得票率を得た。同じ圧勝でもまったく国民の支持度合いが違うのである。
しかも昨年末の総選挙では、投票率が史上最低の59.3%だった。得票率に単純にかけ合わせば、有権者の16%しか自民党を支持しなかったことになるのだ。
さらに最高裁からは選挙区ごとの一票の格差は「違憲状態」だと注文も付けられている。国会での「多数」の意味が、今ほど問われている時はないと言ってもいいだろう。
民主主義における多数決は、国民の多数意見が反映されるという大原則を前提にしている。国民多数の支持を得ていればこそ、強行採決も許容されるのである。
安倍首相は就任直後、「古い自民党には戻らない」と繰り返し、大勝に浮かれる自民党内を引き締めていた。だが、最近はそんな謙虚さはうかがえない。衆参のねじれが消えて、「国民と国会のねじれ」が顕在化するようでは、日本の民主主義は危うい。年明けの通常国会では、国民が納得できる丁寧な国会運営を望みたい。(ジャーナリスト 磯山友幸)