【シンガポール=会田聡】25日に閉幕した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は、日米が対立する関税分野以外にも難しい課題が積み残された。国有企業改革を扱う「競争政策」など進展した分野もあるが、特許権の保護を含む「知的財産」分野などでは依然、米国と新興国の対立が解けていない。主要論点に方向性を付けて「最後の閣僚会合」にするという目標とは、ほど遠い結果に終わり、多国間の通商交渉の難しさを改めて浮き彫りにした。
「70~80%がまとまった」。甘利明TPP担当相は同日の閣僚会合後の記者会見で、交渉の進展状況についてこう強調した。
確かに、これまで難航していた分野の一部に合意の兆しがみえてきたのも事実だ。
国有企業の扱いをめぐっては、米国や日本が民間との競争条件を公平にするよう訴え、新興国に優遇措置撤廃などの改革を要求。これに対し、ベトナムやマレーシアは国有企業が経済活動の重要な担い手となっていることから強く反発していた。このため、今回の会合では米国側が新興国に譲歩。国内だけで活動する国有企業に対し、一定の税制優遇を認めたとみられ、交渉の膠着(こうちゃく)状態は打開されつつあるもようだ。
しかし、交渉関係者が「妥結に向けたハードルになっているのは日米の関税協議だけではない」と明かすように、各国とも未解決の懸案をなお抱えているのが現状だ。
知財分野では、大手製薬企業の存在感が大きい米国が知財収入の確保を狙って新薬の特許期間延長を提案。マレーシアなどは特許切れの安価なジェネリック医薬品(後発薬)が製造しにくくなるとして受け入れを拒否しているとみられる。環境や労働者の権利をないがしろにしないルールを作る「環境」「労働」分野なども意見集約には至っていない。
「生みの苦しみ」か「空中分解」か。21世紀型の新たな通商ルールを目指すTPP交渉が岐路に立っているのは間違いない。