■重要5分野 米国の関心高い品目探れ
--TPP交渉の見通しは
「かなり悲観的にならざるをえない。2月にシンガポールで開かれた閣僚会合は、経済規模が大きい日本と米国が対立して大筋合意に至らなかった。日本はコメなど重要5分野の関税撤廃に、米国は自動車の関税撤廃時期を明らかにすることに抵抗していることが原因だ。日米は4月のオバマ大統領の訪日までの時間を使って双方が歩み寄り交渉参加12カ国の大筋合意を主導してほしい」
--日本企業への影響は
「米国以外にも、マレーシアやベトナムなどの参加国は日本の乗用車や部品といった鉱工業品に高関税をかけている。TPPで関税が撤廃・削減されれば現地生産の効率を上げられる見込みだが、そのメリットが遠のいている状態だ。また、新興国で日本企業は模倣品やコピー商品による被害を受けているが、TPPで取り締まりルールが整備されれば、日本国内のようにビジネスがしやすい環境になるはずだ」
--日本の課題は
「まず重要5分野の関税撤廃について、米国がどこまでの自由化を求めているのかという感触をつかむことだ。コメ、乳製品、牛・豚肉、麦、サトウのなかで米国の関心が高い品目を探るべきだ。また、米国人研究者は日本政府が農業改革に対して真剣かどうかも注目している。農家の体質が強化されれば将来的に関税撤廃の可能性が高まるからだ」
--通商戦略への影響は
「TPP交渉が失敗すれば、日中韓自由貿易協定(FTA)や東アジア包括的経済連携(RCEP)などの参加国も交渉を急ぐ必要がなくなり、遅れる恐れがある。TPPなどメガ(巨大)FTAが実現すれば貿易・投資が拡大し、世界経済の成長が見込まれるので、交渉失敗は経済にマイナス効果を持つと考えるべきだ。安倍晋三政権にとっても、TPPは経済政策『アベノミクス』の成長戦略の柱だ。『第3の矢』としてより効果的な政策を実現するためにも、交渉を成功に導かなければならない」
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【プロフィル】浦田秀次郎
うらた・しゅうじろう 米スタンフォード大大学院経済学博士号取得。ブルッキングズ研究所研究員、世界銀行エコノミストなどを経て2005年より現職。64歳。埼玉県出身。