チェン・ヨ・ズン氏【拡大】
しかし、ウクライナ危機で欧米と歩調を合わせた日本が、ロシア接近の動きを当面はやめざるを得なくなったことで、プーチン氏の「日本カード」も、しばらくは効力を失い、再び中国有利の形勢になったようだ。しかも中国は他にも布石を打っており、ロシアとのガス輸入交渉でさらに優位に立とうとしている。その布石とは中央アジア進出だ。
◆経済利益にだけ興味
中国はもともと「上海協力機構」という中央アジア中心の国際機構を活用し、ロシアとつながりが強い中央アジア諸国を自らの影響圏内に置きつつある。東側の日本、米国、台湾、東南アジアといった、友好的とは程遠い近隣環境とは打って変わって、西側の中央アジア諸国とはかなり良好な関係を築いている。
この地域に対するロシアの帝国主義的アプローチは、反感と不信を呼んでいる。これに対し、中国は経済利益にしか興味を示さず、この地域にありがちな強権政権に対しても、欧米のように民主主義の理想と人権を振りかざして干渉することもない。豊富な資金にものを言わせ各国と経済協力を進めてきた。
こうして、中国は約20年前から中央アジアにおいてパイプライン網作りにいそしんできた。今ではトルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタンの3国をまたぎ、いずれはカスピ海の天然ガスを直接、中国東部まで運ぶ「中央アジア~中国パイプライン網」(CACP)を作りつつある。昨年9月、習国家主席はカザフスタンとこのCACPの仕上げについて調印し、中国から新たに50億ドル(約5100億円)がつぎ込まれることになった。
最近はさらに、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスタンを通るCACPのDラインの建設も発表した。中国は米軍撤退後の空白を埋める形でアフガニスタンへの経済進出を進めており、近い将来、CACPをアフガニスタンにも延ばすだろう。