中国の裁判所が戦後補償をめぐる損害賠償訴訟で「商船三井」所有の貨物船を差し押さえた問題で、商船三井側が中国側に事実上の和解金を支払っていたことが23日、分かった。政府筋が、明らかにした。
支払額は、上海海事法院(裁判所)の決定に基づく約29億円に、金利分を加えた約40億円とみられる。
商船三井側は当初、示談の可能性を模索するため、支払いに応じない構えだったが、船舶の差し押さえが長期間に及べば、業務に支障が出かねないと判断。支払いに応じたとみられる。
政府関係者は23日夜、「三井側が対応するというのは聞いていた。彼らも業務を続けなければいけないからだ」と述べた。
ただ、商船三井が事実上の和解金を支払ったことで、中国で同様の訴訟が多発する可能性もある。
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【用語解説】商船三井の貨物船差し押さえ問題
1936年に商船三井の前身の企業が中国企業と契約し船を借り受けたが、旧日本軍に徴用され、日中戦争時に沈没。その後中国側は賠償請求を続け、2007年に上海海事法院が商船三井に約29億円の支払いを命令。10年の2審判決で原告勝訴が確定した。上海海事法院は19日、同社の貨物船1隻を差し押さえた。