【論風】学校法人城西大学特任教授・土居征夫　元日本留学生は宝 (2/3ページ)

　その中で、日タイ間の元日本留学生を媒介とした経済協力が、タイの産業人材の育成に果たしてきた成果は、極めて大きなものがある。日本の官民は、タイの元日本留学生が多数結集するＴＰＡ（泰日経済技術振興協会）をカウンターパートとして、過去４０年にわたりタイの産業人材の育成、産業インフラの整備を支援してきた。そして７年前には、そのＴＰＡによってＴＮＩ（泰日工業大学）が設立され、現在毎年約１０００人の産業人材を輩出するなど、タイ進出日系企業やタイ国産業の発展に大きな貢献を果たしている。

　最近のこの成果を見た周辺国の元日本留学生たちが、自国の産業人材育成や産業インフラの整備に乗り出す動きが出てきている。例えば、ミャンマーではＭＡＪＡ（元日本留学生協会）の前会長ミンウェイ氏が、数年後にＴＮＩのミャンマー版ともいえる緬日工業大学の設立をめざし、活動を加速化している。ベトナムやインドネシアの元日本留学生にも、同様の動きが始まっている。

　◆官民の新たな支援を

　日本としては、例えば広くアジアワイドで、支援プラットホームを構築し、元日本留学生の志に応えていくべき時であろう。そのためには、国は従来の経済協力の在り方を見直し、具体的な事業を担う元日本留学生の支援に思い切った予算を配分する新たな仕組みを構築すべきである。

　また、民間産業界としても、短期的に日本企業にメリットをもたらす実利的な支援にばかり目を向けず、元日本留学生による自国産業人材の育成や産業インフラ整備、日本と東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）・世界との関係に貢献する構想力を伴ったプロジェクトについても、長期的視点から思い切った支援の手を差し伸べることが必要だ。経済団体による目先の効果を求めた短期的支援では限界があり、百年を見据えた経済界のリーダーによる魂の籠もった新しい支援システムの構築が期待される。

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