懸念した通り、消費税増税は強制的に物価を押し上げ、実質収入を大幅に落ち込ませてしまった。使えるカネが細った家計は消費を減らす。消費は増税前の駆け込みの反動減が薄れるはずの7月以降も大きく落ち込んだままだ。企業は過剰在庫を抱え、減産に追い込まれている。今後、雇用にも響けば、慢性デフレに舞い戻る。そんな情勢の下で円安が進む。
黒田さんはこのまま異次元緩和を続け、米国の量的緩和打ち切りに伴う市場反応をてこに、もう一段の円安に進行するのが、自然の流れだと考えているようだ。その結末は、コスト・プッシュ型インフレだ。2%のインフレ目標自体は楽々と達成できるだろうが、それが黒田日銀の本懐なのか。産業界の悲鳴が示すように、内需型業種の多い中小企業や地方経済は疲弊する。多国籍化に邁進(まいしん)する大企業が停滞する内需をみて国内生産・雇用に重点を移すはずはないだろう。
今、黒田日銀に必要なのは、無為の円安容認、のっぺりした異次元緩和策の継続ではないはずだ。まずは、消費税増税による致命的なマイナス効果をきちんと検証し、安倍首相に来年10月からの消費税率10%への引き上げを思いとどまらせる。次には、金融政策の機動性を取り戻し、一本調子の円安には毅然(きぜん)と弾力的に対応することだろう。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男)