原因は何か。日本の電子政府・電子自治体サービスは、既存の行政手続きを単にオンライン化しただけで、利用者である国民にとっていかに使いやすいサービスを実現するかという発想がなかったからだ。事前にモニターを募って利用してもらえば、もう少しは使いやすいサービスが実現したかもしれないが、提供者側の論理だけでつくられたサービスの典型である。
新しく導入されるマイナンバー制度にしても、行政にとっては所得把握が格段に容易になるが、国民にとってのメリットが全く伝わってこない。政府の広報資料には「プッシュ型の行政サービスも可能になる」と書かれているが、具体的にどのようなサービスをイメージしているのか。例えば、マイナンバーを医療保険料の徴収だけでなく幅広く医療分野で活用すれば、電子レセプト(診療報酬明細書)から医療費控除額を算出して自動的に所得税から控除するサービスが可能になるかもしれない。
重要なのはマイナンバーを活用して実現できる理想的なサービスの将来像を描いてみることだ。現時点では「マイナンバーを医療・介護現場での情報連携に活用することに医師会や歯科医師会が強く反対している」(厚生労働省幹部)ので、上記のようなサービスはもちろん不可能である。それでも本当に外国人居住者を含めて国民が使いやすい電子政府・電子自治体サービスを実現するために、各方面からの反発覚悟で将来像を描き、着実にハードルを乗り越えていく必要があるのではないか。超高齢化社会は目前に迫っている。
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